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生き方

負の感情を溜め込まない 臨床心理士が教える「朝・昼・夜」の休息習慣

佐瀬りさ(臨床心理士)

2026年08月19日 公開

睡眠不足の日にいつもよりイライラしたり、モヤモヤしたりした経験はありませんか?睡眠不足が続くと、緊張のスイッチが入り続けた状態となってしまい、些細なことでも悲しんだり、人の言葉がきつく感じたりすることがあると、臨床心理士の佐瀬りささんはいいます。本稿では、今日・明日からでも実践できる「こころを整える休息方法」について見ていきましょう。

※本稿は、佐瀬りさ著『こころの「安全基地」のつくりかた』(大和出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

睡眠や休息がこころを回復させる

睡眠や休息が脳とこころを回復させる仕組みは、近年の研究によって少しずつ明らかになってきています。ちゃんと眠りちゃんと休むことで、脳は静かに、そして確実に回復の作業を始めます。

眠っている間も、脳は止まっているわけではありません。とくに「レム睡眠」と呼ばれる時間には、その日経験した出来事や感情が、ゆっくりと整理され、記憶として落ち着いていくのです。

また近年の研究では、睡眠中に脳の老廃物を洗い流す「グリンパティック・システム」という仕組みが活発に働くこともわかってきました。起きているときと比べて、より効率よく脳の老廃物が排出されると考えられています。つまり、睡眠は脳にとっての「お掃除時間」でもあるのです。

さらに休息しているときの脳も、実はとても大切な働きをしています。何もしていないように見える時間にも、脳は経験を振り返り意味づけをし、自分自身を整え直しています。この働きは「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれ、ぼんやりしているときや、静かに考え事をしているときによく働きます。

また、休息を取ることで、身体は緊張モード(交感神経優位)からリラックスモード(副交感神経優位)へと切り替わります。神経のバランスが整い、「司令塔」である前頭前野も回復していきます。

このように、脳とこころの回復は、睡眠と休息によって、ゆっくりと進んでいきます。しっかりと「潤す」ことで、私たちの中に備わっている整う力が、自然と働きはじめるのです。

 

夜のワーク「お疲れさまタッチング」

ここでは「夜のワーク」「朝のワーク」「日中のワーク」の順にご紹介していきます。夜のワークは、神経を安心モードへと切り替えていくためのものです。朝や日中のワークは、自分の「乾き」に気づきながら、その都度「潤い」を足していくためのものです。

<お疲れさまタッチング>

布団に入る前や、布団の中で、身体全体に意識を向けてみましょう。今日いちばん疲れている部分はどこでしょうか?緊張が残っていたり、こわばりを感じたりする部分はありませんか?その部分に、やさしく手を触れて、ゆっくりと呼吸をしてみます。

「今日もよく頑張ったね」

「今日1日、お疲れさま」

こんなふうに、声をかけてみるのもよいでしょう。どんな感じがするでしょうか?

こころや身体の変化を感じてみてください。触れることや、声をかけることによって、ふわっと緩む感覚があれば、それで十分です。はじめはうまく感じられなくても大丈夫です。毎日継続してみてください。

このように、自分自身に優しさや思いやりを向けることは「セルフコンパッション」と呼ばれています。温かい手で自分に触れることは、脳や神経をリラックスさせる効果があります。また、ねぎらいの言葉は、こころと身体を安心させ、明日への回復力を高めてくれます。

 

朝のワーク「カラダスキャン&あなたへの処方箋」

目が覚めたら、今日の自分の「乾き具合」を感じてみましょう。身体とこころ、両方の状態を感じてみるカラダスキャンがおすすめです。

まずは身体に意識を向けます。

「どこか気になるところはないかな?」

「疲れは溜まっていないかな? 」

こんなふうに問いかけてみて、今日の体調を5段階で表してみましょう。

次に、こころに意識を向けます。「どんより」「イライラ」「フラット」「ウキウキ」「たかぶっている感じ」など、今の気持ちを感じてみてください。そのまま言葉で表してもよいですし、こころの重さとして5段階で表してみるのもよいでしょう。

朝は何かと忙しく、動き出すとやらなければいけないことで頭の中がいっぱいになり、身体やこころの感覚を感じにくくなってしまいます。できれば布団の中で感じてみましょう。

カラダスキャンで気になるところがあったら、「もし、大切な人が同じ状態だったら」と、想像してみてください。あなたはその人に、何をしてあげたいと感じますか。どんな言葉をかけてあげたくなるでしょうか。それを、今日の自分にもしてあげてください。それが、今日のあなたを潤すための「処方箋」になります。

大切な人を扱うように、自分自身を大切に扱っていくことで、こころと身体は少しずつ潤いを取り戻していきます。

 

日中のワーク「休息の練習」


※イラスト:楠わと

休むことは、練習によって少しずつ上手になっていきます。繰り返すことで、神経は安心モードにつながりやすくなります。短い時間でも大丈夫です。気づいたときに、少しだけやってみましょう。

「頭の中を少しぼんやりさせる」ことができれば、どんな方法でもかまいません。休息リストのような小さな休息を、意識して取り入れてみましょう。やってみて、あなたの身体やこころがどう変わったかにも目を向けてください。

「少し緩んだ」「呼吸が深くなった」「疲れが取れた」そんな「潤う感じ」があるものを、少しずつ集めていきましょう。休む練習を重ねるほど、神経は安心モードへ戻りやすくなります。

ここで日中のワークにおすすめの休息方法を2つご紹介します。どちらも気軽にいつでもできるので、身体やこころを潤したいときに活用してみてください。

・呼吸に気づく(マインドフルネス) 

マインドフルネスとは、「今、この瞬間」に意識を向ける練習です。頭の中が過去の後悔や未来の不安でいっぱいになっていると、身体は休んでいても、こころは働き続け消耗してしまいます。そんなときは、今の呼吸に意識を向けてみましょう。

息を吸う。吐く。ただ、それを感じてみます。呼吸を変えようとしたり、深くしようとしたりする必要はありません。ただ「吸っているな」「吐いているな」と感じてみます。「過去や未来のことを考えていたな」と気づいたら、また呼吸に戻ります。こうして、「今」に戻ることで、神経は少しずつ落ち着いていきます。忙しいときでも、1分ほど取り入れるだけで、こころと身体の休息につながります。

・重さと温かさを感じる(自律訓練法)

自律訓練法は、身体をリラックスした状態に導く方法です。本来は決まった手順で行う方法ですが、ここでは気軽に試せる形でご紹介します。

まず、ラクな姿勢で椅子に座り、手を腿の上に置きます。そして両手に意識を向けながら、こころの中で、「手が重たい」「手が温かい」とゆっくり繰り返します。はじめは何も感じなくても大丈夫です。ただ、両手の感覚を眺めていてください。無理に重くしよう、温かくしようとする必要もありません。繰り返していくうちに、なんとなく、重さや温かさが感じられることがあります。重さや温かさは、身体がリラックスしているときに現れやすい感覚です。

私たちはつい、頭で「落ち着こう」としがちですが、自律訓練法はその逆です。リラックスの身体の状態を先につくることで、こころや頭も自然と落ち着きやすくなるのです。仕事の合間や移動中の電車の中でもできるので、気軽に試してみてください。

 

潤いのログワーク

「潤す」行動を取り入れたら、ぜひおすすめしたいことがあります。それは「ログをとる」ということです。

私たちはつい「やる」ことに意識が向きやすく、「やったあとにどうだったか」を見落としてしまいがちです。やっただけで満足してしまい、やったあとを感じていなかったり、やっても変化がないと、「自分がおかしいのでは?」と責めてしまったりします。

でも、私たちは一人ひとりが違っています。だから誰かにとってよい方法が、あなたにも同じように合うとは限りません。合うこともあれば、合わないこともある。それでいいのです。

あなたに合う方法を見つけるために、ログを活用してみましょう。「潤す」行動を取り入れたら、どんなことを感じたか、どれくらい回復したか(充電できたか)を記録してみてください。とくに潤すステップで大切な睡眠は、一般的によいと言われていることが、そのまま当てはまらないこともよくあります。

寝る時間や睡眠時間、寝る前の過ごし方、部屋の明るさや温度、着るものの心地よさ。どれも人によって違います。だからこそ、自分の睡眠を振り返り、どんな「潤す」行動が翌朝の充電につながるのかをログで確かめてみましょう。

大切なのは、あなたを、あなたの真ん中にしっかりと置いて、あなたが少し緩むこと。あなたが回復できるやり方を見つけていくことです。正解を探すのではなく「自分に合うこと」を宝探しをするように集めていきましょう。

著者紹介

佐瀬りさ(させ・りさ)

臨床心理士

1970年、新潟県生まれ。幼いころから「人の心」に興味を持ち、大学・大学院で心理学を学んだ後、臨床心理士となる。約30年にわたって学校などの現場でクライアントの困難に寄り添い、2018年に「こころサロン創」をオープン。現在もクライアントが自分らしく生きていけるようになることを大切にしたカウンセリングを続けている。

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