中国のスーパーは日本より野菜や果物、魚、肉の種類が多い。野菜は収穫したままの「ワイルド」な状態で、量り売りされている。
海外のスーパーを訪れると、棚に並ぶ食材や商品の売り方から、その国ならではの暮らしや食文化が見えてきます。日本と距離の近い中国も例外ではなく、スーパーをのぞけば意外な違いが随所に。本稿では、ジャーナリスト・中島恵さんの著書『中国の回鍋肉にキャベツは使わない』をもとに、中国のスーパー事情から見えてくる食文化や暮らしの違いをご紹介します。
※本稿は中島恵著『中国の回鍋肉にキャベツは使わない』(ウェッジ)より一部を抜粋・再構成したものです。
日本との違いに驚く中国のスーパー
中国には、日本では見かけたことがない食べ物がたくさんある。広大な国だけあって、市場やスーパーに行くたびに「あれ?」とか「何これ!」という発見があっておもしろい。
だから、私は中国に出かけるたびに、必ず市場やスーパーに足を運ぶ(定点観測先として、他に病院と書店にも必ず寄っている。そこから社会が見えるからだ)。
スーパーを歩いていると、野菜でも果物でも、「日本と違うなあ」と感じることが多く、その産地や見た目が気になってしまう。
たとえば、春から夏にかけて出回る柑橘類は、日本ならデコポン、甘夏、夏みかん、はっさくなど、同時期に売られるのは5~6種類くらいだが、中国だと10種類以上は並んでいる。
いつだったか、熊本名物の晩白柚(ばんぺいゆ)みたいな巨大な柚子が、それだけで3種類くらい売られていた。南方でのみ生産されている果物でも、流通事情がよくなったおかげで、全国どこでも食べられるようになった。国土面積の大きさを考えると、それだけでもすごいことだ。
スーパーで印象深かったことといえば、"ひまわり"を見かけたことだ。中国人はピスタチオやピーナッツのように、ひまわりのタネをおやつとして食べる習慣があるが、私が見かけたのはひまわりの花。
ガクから先の花をカットして、ラップに包んで売っていた。持ち帰って家で乾燥させ、花の中心にあるタネを抜き取って食べるのだろう(と推測している)。とても斬新な販売方法だ。
トマトやキュウリなどは枝豆みたいに"枝つき"が基本だ。キュウリは黄色い花が咲いた状態で売られているし、トマトもへたや葉が枝についたままでとてもワイルド。それらが山のように積まれているのは量り売りだからだ。
一斤(500グラム)でいくらと表示されているので、一見すると、日本とどのくらい金額が違うのかよくわからない。慣れてきたらパッと計算できるのだろうけど、慣れないと料金の予測がつかない。
でも、見た目はとても新鮮そうだ。
中国でもポピュラーな野菜、ニラを見かけたときは、ふと最近よく耳にする「割韮菜(グージウツァイ)」という表現を思い出した。本来は「ニラ刈り」の意味だが、ニラは刈っても刈っても生えてくることから「立場が弱い人が強い人に搾取され続けること」を指す。若者のSNSで自虐的に使われたりする。
卵はブランドや種類ごとに分けて売られている。白い卵、茶色い卵、烏骨鶏のグレー色の卵といった感じ。日本のように、S、M、Lサイズというサイズ分けはなく、パックに入れないで、ビニール袋に入れて売る店もある。
肉や魚も量り売りが多い。魚の一部は水槽に入れてあり、それをすくって取るスタイルの店もある。最近では日本のように、スライスした肉をパックに入れて売る店も増えてきた。中国人も核家族化で、塊肉や魚をまるごと買う人が減ってきたらしい。2026年初め、中国メディアの報道によると、単身世帯が増えた深圳などでは「一人分」というシールを貼った少量パック(80~200グラム入り)の肉や野菜が売り出され、好評だという。
コメ、調味料、菓子、お惣菜もずいぶん充実している。コメは日本のように10キログラム入りの袋もあるが、量り売りもある。黒米、ひえ、粟などの雑穀も売られていて、それぞれ買って、自宅でミックスして使う。
中国の北部では日本と同じく短粒種、南部では長粒種が主に生産されており、両方売っているスーパーもある。
日本との違いを実感する「調味料コーナー」
調味料コーナーで日本との違いを実感するのは「油」だ。中華料理はとにかく大量の油を使う。そのため、5リットルの油のボトルを買うのが当たり前だ。しかも、中国では「买送(マイ一イーソン一イー)」(一つ買ったら一つもらえる)という販売方式が多いので、一度に10リットルの油を持って帰ることになる。
400グラム、1000グラムのボトルが主流の日本のサラダ油とは大違いだ。
ちなみに、「日清オイリオ」のサイトによると、日本では計量法により油の量を「グラム・キログラム」などの重量で表すが、海外の多くは「ミリリットル・リットル」などの容量で表す。そのため、表記が異なる。
20年以上前に神戸に留学に来ていた中国人が日本人の家に下宿し、キッチンはその家族と共用だった。その際、「あまりにも油を使いすぎて、キッチンが油まみれになり、下宿を追い出されてしまったんです」というエピソードを聞いたことがあった。それくらい、中国人は料理に油を使う。
大容量のボトルは持ち運ぶことを最初から想定しているのか、中国では全部取っ手がついている。日本でも大きいボトルの場合、取っ手がついているが、中国では日本のように小さいサイズのボトルは売っていない。
とにかく重いので、車がなければ持ち運べないが、今ではそういう買い物はネットで取り寄せる人が多くなった。中国では16~17年頃から、食品に限らず、何でもネットで購入する人が増え、消費行動が大きく変わった。それはそれで便利ではあるが、やはり、日本人の感覚では、スーパーに足を運び、あちこち吟味しながら買うのが楽しいのに、と思ってしまう。