写真:福尾美雪
子どもに何を食べさせたらいいのか、好き嫌いにどう対応したらいいのか――。日々の食事づくりに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。料理家のウー・ウェンさんは「まずは自分が食べたいものを作ればいい」と語ります。
子どもにも大人にも人気のメニューのお話から、子どもの食事への向き合い方、さらには外食の楽しみ方まで。毎日の食卓をもっと気楽に、そして楽しくするヒントをお聞きしました。
子どもにも大人にも大人気!「チャーシュー」をおいしく作るには?
――ご家庭での食の思い出が本の中にいくつも描かれていました。特にお子さんが小さい頃によく作られた料理や、お子さんのいる家庭におすすめしたい料理はありますか?
【ウー】肉団子です!肉団子に季節の野菜を入れれば、その野菜が絶対においしくなるし、子どもたちも1皿でしっかり栄養をとれるんです。本の中では大きな肉団子のスープを紹介しましたが、年齢に合わせてサイズを少しずつ変えていくのが大事だと思います。肉団子自体は変わらないけれど、入れる野菜を変えることで毎日作っても違う料理になります。
――たしかに!ウーさんは、お子さんのお友達がお家に遊びに来たときには、チャーシューを作って振る舞われていたそうですね。
【ウー】チャーシューは本当に大人気です。先日もイベントで料理を出したんですが、前菜に野菜料理やシュウマイを並べた中で、一番早くなくなったのがチャーシューでした。やっぱり肉は誰でも好きなんですよね。特に私のチャーシューは一度蒸してから仕上げるので、柔らかくて食べやすいんです。
――蒸しものは最近人気ですよね。チャーシューを蒸すときのコツはありますか?
【ウー】蒸す時間そのものよりも、蒸した後にしばらく置いておくのが大事なんです。蒸したてより、少し落ち着かせた方がおいしさが増します。スポーツでも運動の後にクールダウンの時間が必要ですよね。それと同じで、蒸した後、じっくり待つことがポイントです。すぐ蓋を開けてしまうと水分が蒸発して乾燥するだけです。
――最近はせいろも流行っていますよね。フライパンの上に金属の蒸し器を乗せて蒸すのと、せいろで蒸すのとでは違いがありますか?
【ウー】せいろで蒸すのが一番だとは思います。木は自然の素材なので、蒸気を吸収したり発散したりしてくれるんです。金属の器具だとそれが難しくて、ちょっと息苦しい仕上がりになることもあります。ただ、肉を蒸すとどうしてもせいろを清潔に保つのは難しいですね。肉はフライパン、野菜はせいろ、というように、両方を上手に使い分けるのがいいと思います。
子どもの好き嫌い、どう対応する?
――仕事から帰って、「子どもに何を食べさせるか」とプレッシャーを感じている親御さんは多いと思うのですが、ウーさんはどのように考えられていましたか?
【ウー】あまり食事のことで悩まないでください。まず「考えすぎないこと」。子どもに食べさせる前に、自分が食べないといけないんですから。自分が食べたいものを作ればいい。毎日お子様ランチを用意する必要はありません。頑張って仕事をしているのだから、無理をせずにできることを考えましょう。
家族がいれば料理をやめることはできませんからね。「今日はこれなら作れる」と思ったものを作ればいいんです。
――なるほど、まったくその通りですね...。お子さんの好き嫌いに悩まれている方も多いと思うのですが、ウーさんのご家庭ではどのように対応されていましたか?
【ウー】無理に食べさせなくても大丈夫ですよ。好き嫌いがあることは悪いことではありません。うちの息子は昔きゅうりが大嫌いで、私がきゅうりを料理するだけで別の部屋に逃げていました。でも今では大好きなんです。結局は成長とともに体が必要として、自然に食べられるようになるんですよ。
だから無理に混ぜたり隠したりする必要はありません。混ぜても子どもにはバレますし、私は人を騙したくないんです。好き嫌いがあっても、大人になったときに食べられるようになればそれで十分です。
――いずれは体が自然と欲するようになる、ということですね。
【ウー】唐辛子だっていきなりは食べられないけど、大人になると好きになったりするでしょう。子どもは、自分の体に必要のない食材だから食べない、ということだと私は考えています。
私自身、最近は苦瓜を無性に食べたくなります。きっと体が「そろそろ体の中をきれいにしなさい」と言っているんでしょうね。
毎日の食事こそが大事
――ウーさんは健康的な家庭料理を作られるプロですが、外食をするときは、どんな基準でお店を選んでいますか?
【ウー】外食のときは、食べたいものを食べていいと思います。たとえ1日くらい体に良くないものを食べても、大した影響はありません。毎日の食事こそ大事なんです。
――外では多少は自由にしていいということですね。
【ウー】そうです。外食は楽しみたいから行くんです。美味しいものは体に良くないこともありますが、そんなことは気にせずに「今日は楽しむ」と決めたら、思い切り食べましょう。
――ウーさんが特に外で食べるのが好きなものはありますか?
【ウー】お寿司ですね。お寿司は家では作れませんから。私は基本的に「自分で作れないもの」を外で食べます。新鮮なネタが出てくるのも楽しみですし、外食は体験そのものです。だから健康のことよりも、楽しむことに徹します。
――ウーさんは、息子さんにも「お昼何を食べたの?」とは聞かないそうですが、外食は自由に楽しんだらいいということですね。
【ウー】外で○○は食べるな、と言っても聞きませんしね(笑)。家での食事がしっかりしていれば、それで十分です。みんな結局は家に戻ってきて家庭の味を食べるんです。体は正直で、外食ばかりでは飽きるし疲れますからね。
(取材・執筆:PHPオンライン編集部 小林実央)