なぜ持ち家は負債なのか? 『金持ち父さん』が教える“お金持ちになる人”の考え方
2026年09月11日 公開
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。
今回、紹介するのは『金持ち父さんのお金の教科書 ――親から子に伝える一生お金に困らない考え方』(ロバート・キヨサキ著、岩下慶一訳、筑摩書房)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
金持ち父さんシリーズはファイナンシャル教育の基盤
「金持ち父さん」シリーズは、世界累計6600万部というビジネス書屈指のロングセラーです。本書『金持ち父さんのお金の教科書』はその最新作であり、シリーズの集大成にあたる作品です。
起点にあるのは、代表作『金持ち父さん 貧乏父さん』と『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』(ともにロバート・キヨサキ著)。私も学生時代に読み、資産と負債の新たな視点が得られたことで資産形成の見え方が変わったことを今でも覚えています。
シリーズが投資家だけでなく、起業を志す人、収入が増えて資産形成を考え始めた人にまで届いてきたのは、扱っているのが投資テクニックではなく「稼ぎ方の選択肢」そのものだからでしょう。給与所得だけでは資産が積み上がりにくくなった今、そのメッセージはむしろ切実さを増しています。著者は最新作で何を伝えようとしたのでしょうか。
キャッシュフロー・クワドラント
人は主な収入源によって4つの区分(クワドラント)に分かれるといいます。この区分はその人の感情・性格・指針の面でも異なる特性を示しているそうです。一つずつここで紹介します。
Eクワドラント(従業員):主には会社や政府からの給与で生活をしていて、安全・安定した仕事、福利厚生、昇給などが主な関心事です。堅実でリスクの低い安定した収入の仕事を求める傾向がある人々となります。
Sクワドラント(自営業):主に自分が持っている中小企業あるいは個人事業の収入で生活しています。時間給やコミッションが収入の中心となります。自分の時間が主な収益源になる人とも言えます。
Bクワドラント(大規模ビジネスのオーナー):Sクワドラントとの違いは、オーナーが参加しようとしまいと稼働が続くシステム(会社)の所有者であることです。仕事では他の人々の時間とお金を活用しています。
Iクワドラント(投資家):投資による利益や配当が主な収入源の人を指します。投資収益率にこだわり、自分のお金を最大限に働かせることが、重要な指標となる人々です。
4つのクワドラントを見通してみて、おそらくEクワドラントに所属している人が多いとは思いますが、資産運用をしている人は部分的にでもIクワドラントも兼ねることができています。
著者によるといわゆる富裕層になるためにはBクワドラントかIクワドラントになることが必要で、Iクワドラントの活動は人生のできるだけ早い時期から意識した方が良いといいます。また、BクワドラントとIクワドラントは、勤労所得以上に大きな不労所得が得られることも特徴です。
本当の資産と負債の意味
著者が定める資産とは「君のポケットにお金を入れてくれるもの」のことを指します。つまり資産を保有することで収入が増えるものになるので、株式・債券・収益不動産などが該当します。なお、収益不動産でもローンの金利・諸経費・税金などを差し引いて利益が出るなら資産と言えますが、運営を誤って赤字となれば負債になるといいます。言い換えれば、「君のポケットからお金が出ていってしまうもの」であれば、それは負債だと考える、ということです。
ここが金持ち父さんシリーズで著者が語る最も強いメッセージであり、一般的な資産と負債という言葉の理解とは異なる部分です。この部分に関しては次の章でも具体的に補足していきます。
今の家計を見ると、給与などで得られる収入が、税金、住宅や車のローンの支払いで差し引かれ、残額を生活費に回してなんとかやりくりをしている状態かもしれません。むしろそれが多数派です。
一方で、富裕層は全く別のお金の流れになります。資産が主な収入を生み、余剰の収入はまた資産に投資をされていくというサイクルがあります。その状態に至ると収入よりも資産の方に意識が向くようになるそうです。
家は資産なのか
何が資産で何が負債かを深く理解するために、具体的な例として持ち家は資産なのか、というテーマについて深ぼっていきましょう。
貧乏父さんの代表的な言葉として、「家は資産であり、最大の投資でもある」という一文が紹介されます。ただ、金持ち父さんによると持ち家は負債だというのです。意外と思う人も多いはずです。
一般的な会計の知識からは、持ち家は売却すればお金が入るので資産と考えられます。また、住宅ローン残高を上回る売却価値があれば借入を返済してもお金が残るので、ますます資産だとも感じられます。
ただ、著者のいう資産の定義である、「ポケットにお金を入れてくれるもの」かどうかを吟味してみましょう。持ち家はローンの金利支払いや固定資産税や修繕などの維持費がかかるものなので、持っているだけではお金が出ていくものです。
特に米国などでは収入が上がるとさらに良い家に引っ越して、住宅ローンを増やす傾向があって、さらに出ていくお金が増えていきます。車はより負債の色が強く、持っているだけでも売却価値が下がりますし、ローンで買えば金利もかかります。ガソリン代や保守費用などの維持費も高く、著者の定義に従うと「ポケットからお金が出ていく」負債の代表格だと言えるでしょう。
人生の喜びだと思われている持ち家や車の購入が、負債を増やすことだというメッセージは初めて聞くと驚きすらあります。日常の支出が多いと稼いでくれる資産に投資する余力が作れない、という点が金持ち父さんへの道を難しくします。相当な余裕がなければ、豪華な家や車は資産形成の天敵にもなってしまうのです。
金持ち父さんをより広くとらえてみる
ここまでの紹介でも、金持ち父さんになるための道はどのようなものなのかは、少し感触がつかめたのではないでしょうか。
そうは言っても、お金を稼ぐことが人生の目的ではない、という人もたくさんいるでしょう。もう少し視野を広げるならば、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著)も併せて読みたい一冊です。
それによると、人生の目的は思い出作りであって、同じお金だったとしても比較的若い時期に使った方が豊かな思い出につながりやすいので、40代ごろからうまくお金を使っていった方が良い、といいます。特に晩年になると体調面の不調から旅行や食事の楽しみが減り、お金を使っても若い頃よりは充実感が得られにくいものだそうです。
みごとに「金持ち父さんシリーズ」と対比になるような主張ですね。裕福になりたいのであれば金持ち父さんの主張を信じることが近道でしょう。ただ、それ一辺倒だと人生が豊かになったとは言えず、うまくお金を使っていくことも大事なことです。この絶妙なバランス感覚を持つことができれば、人生がより充実するはずです。
世界で代表的なビジネス書と言われる「金持ち父さんシリーズ」を読むと、富裕層の考え方を知ることができますし、資産運用のイメージが膨らむことは間違いなさそうです。生きていくにはお金は必要ですし、資産形成について理解を深めることは決して無駄にはなりません。金持ち父さんシリーズに触れたことがない人も、以前読み内容を忘れている人も、ぜひ本書を読んで人生の豊かさについて理解を深めてみてはいかがでしょうか。