夏井いつきさんが教える “凡人”から“才能アリ”の句にステップアップするための発想法
2026年09月29日 公開
写真:御厨慎一郎
テレビ番組「プレバト!!」でおなじみの俳句の先生、夏井いつきさんは、俳句を雑誌やコンテストなどに投稿する「投句」をすれば俳句人生をさらに楽しめるようになると語ります。
新著『夏井いつきの世界一わかりやすい投句の授業』では、同シリーズで俳句を学習してきた編集者・秘英知(ぴーえいち)さんが夏井さんから投句の極意を学んでいきます。
本稿では、「連想ゲーム発想法」で兼題(お題)の季語から俳句のタネを作る方法を紹介します。
※本稿は、夏井いつき著『夏井いつきの世界一わかりやすい投句の授業』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。
※夏井いつきさんのラジオ「夏井いつきの一句一遊」(南海放送)では、月曜日→火曜日→水曜日→金曜日の順で、紹介する俳句のレベルが上がっていく仕組みになっています。
ステップ1 季語から連想する単語を書く
秘:夏井先生、今回は「連想ゲーム発想法」なるもので、兼題の季語から俳句のタネを作る方法を学ぶということでしたが…?
夏井:そうだよ。具体的に、どうやって季語にあうフレーズを考えるのか、一緒にやってみよう。この方法を知ると、前回ちょっと話した言葉の距離感というのがどんなものなのか、ぐっとイメージしやすくなるはず。連想ゲーム発想法は、メモ用紙とペンが必要なんだけど、持っている?書けるものなら、なんでもいいよ。
秘:両方とも、そろっています!
夏井:準備OK。それじゃあ、メモ用紙の真ん中あたりに兼題の季語を書いてみて。今回なら「苗床」だね。
秘:真ん中ですね。このあたりに「苗床」っと。
夏井:書けたら、ここから連想ゲームっぽくなるんだけど、「苗床といえば、○○○」みたいな感じで、調べたり、思いついたり、イメージしたりしたことを、真ん中の「苗床」から線を引っぱって、放射線状にどんどん書きだしていってほしいんです。
秘:それで連想ゲーム発想法という名前なんですね。夏井先生、その苗床からの連想というのは、たとえば「植物」「畑」「土」みたいなことでいいんですか?
夏井:それでOK。歳時記や辞書、インターネットなどで調べた情報や、苗床をイメージして頭に浮かんだことを、単語レベルでいいので、ざーっと書きだしていくだけでいいよ。そのときに、できれば、書きだす単語は季語を避けることを意識してみるといいかな。あとで俳句を作るときに、「季重なり」(一句のなかに季語が複数入っていること)になっちゃうからね。
秘:私、季語の知識がないので、知らないうちに入っちゃうかもしれません…。
夏井:あくまで、できればでOK。まずは思いつくままに手を動かしてみよう。最初のうちは、季語かどうかを気にしすぎると言葉が出てこなくなるからね。季重なりになっているかどうかは、あとでチェックすればいいんだし。
秘:わかりました!それじゃあ「ポット」「トレイ」「水」。
夏井:そうそう、いい感じ。
ステップ2 「一周目」から連想をつなげる
夏井:ステップ1で季語から連想する単語をざーっと書きだしたら、それを「一周目」と呼ぶことにしよう。この一周目は使わないから置いておく。
秘:えっ、せっかく書いたのに使わないんですか!?
夏井:一周目に出てくる単語は、類想ワードばかりだからね。秘英知さんが、ほんの数分で見つけたことは、だれでもすぐに思いつく(笑)。
秘:火曜日レベルの凡人の句になっちゃうわけですね…。
夏井:そうだね。パッと思いつくことなんて、みんなほとんど同じ。そこから俳句のタネを作ろうとすると、どうしても類想になる。だから、せっかく書いたんだけど、あえてそこは使わずに、一周目の単語からさらに線をのばして、もう一周、連想をひろげてみよう。
秘:「二周目」を書くということですか?
夏井:その通り。たとえば、一周目に出てきた「水」という単語から、さらに外へ線をのばして、そこから連想をひろげることはできる?
秘:えっ、水で…。
夏井:いったん苗床のことは考えずに、水から連想するだけでいいよ。
秘:水…たとえば、ペットボトル、水道、トイレ、バケツ、ホース、じょうろ。
夏井:いろいろ出てくるね!そんな感じでOK。「水」から線をのばして、「ペットボトル」「水道」「トイレ」「バケツ」「ホース」「じょうろ」と書こう。
秘:はい!…今、「じょうろ」と書いていて思い出したんですが、子どものころ、祖父が使っていた農業用の金属製の大きなじょうろがあこがれでした。私は象のかたちの小さなおもちゃのじょうろしか持っていなかったので、祖父のピカピカ輝く銀色のじょうろがかっこよくて、うらやましくて。
夏井:すてきなエピソードだね。「じょうろ」からさらに線をのばして、「金属製」「象」「銀色」とでも書いておこうか。これは「三周目」だね。
秘:手を動かしたら、いろいろ浮かんできますね。
ステップ3 単語を一つ選んでフレーズを作る
夏井:次に、今、書きだした二周目、三周目の単語のなかから、よりオリジナリティーやリアリティーのありそうなものを選んで十二音のフレーズにしていくんだけど、どの単語がいいと思う?
秘:えっ、どれですかね…。
夏井:たとえば、さっきの「じょうろ」には三周目まであるし、秘英知さんの思い出もつまっていそうだよね。これなら苗床のイメージに引っぱられずに、純粋にじょうろのことだけを具体的にイメージできるんじゃない?
秘:そうですね。ほかの単語よりは語れることがありそうです。
夏井:それじゃあ、今回は「じょうろ」にしようか。単語を一つ選んだら、そこから発想をはじめて、十二音のフレーズにまとめてみよう。
秘:まとめてみようと、急にいわれましても…(汗)。
夏井:苗床のことは考えず、じょうろのことだけを具体的に描写してみて。たとえば、さっき語ってくれたみたいに、素材とか、かたちとか、色とか。一つの方法として「5W1H」で考えると発想がひろがりやすいよ。
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【発想をひろげる問い 5W1H】
いつ(when):時間
どこで(where):場所
だれが(who):人物
なにを(what):内容
なぜ(why):目的
どのように(how):手段
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秘:わ、わかりました。ちょっと考えたいので、休憩をもらっていいですか?
夏井:もちろん!まとまったら教えてね。
──20分後──
秘:お待たせしました。うまくできたか自信はないですが…一句できました。夏井先生が「苗床のイメージに引っぱられずに」といっていたので、農業用のかっこいいじょうろじゃなくて、子ども用のかわいいほうと取り合わせてみました。
・苗床やじょうろの象の赤き鼻
夏井:おっ、うまくまとめたね!リアルに描写できているよ。どんなじょうろか、みんなが同じものを思い描けるのがいい。
秘:私、小さいころ、赤い象の鼻の部分を持って、振りまわしていたんです(笑)
夏井:かわいいね(笑)。きっと、子どもがお手伝いをしたくて自分のじょうろを持ってきたのかなとか、一生懸命おもちゃのじょうろで畑に水をやるのかなとか、想像がひろがっていくよ。秘英知さん、これなら水曜日レベルです!
秘:えええっ!水曜日!才能アリ!うれしいです!
夏井:こんなふうに、季語を真ん中に置いて、まるで連想ゲームみたいに言葉をつなげながらたどっていくと、季語とリンクしつつ、でも、多くの人が思いつく類想ワードから距離を置くことができるんです。「水」以外の、ほかの一周目の単語でも同じようにやってみると、また別の角度から、いろいろなフレーズを作れると思うよ。
秘:これなら、兼題として先に季語が決まっていても、無理なく季語にあうフレーズを考えられそうです。