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メンタルヘルスの「新常識」

山本晴義(横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンターセンター長)

2013年07月08日 公開 2022年06月06日 更新

〔誤解〕その3 ――身体を休めれば心も元気になる

 

体力を使う仕事をしているなら身体を休めるべきですが、現代のビジネスマンの多くが感じる疲れとは、人間関係の悩みや仕事上の問題など、頭や心に関係する疲れが大半です。

そんな場合に家でゆっくり休んでしまうと、いろいろと考え込んでしまい、かえって悩みが深刻化してしまうこともあり得ます。

「頭の疲れ」やストレスを癒すには、実は身体を動かすことが有効です。体操でもジョギングでもスポーツでもいいですから、運動する習慣を持ちましょう。

「忙しくて、運動をしている暇がない」と言う人もいるかもしれませんが、アメリカのジョージ・ブッシュ元大統領は、大統領の任期中、1日たりともジョギングを欠かさなかったそうです。空いた時間に運動するのではなく、意識して時間を作るといいでしょう。

◇新常識◇「心の疲れ」は、身体を動かすことで解消できる

 

〔誤解〕その4 ――部下の悩みを聞くには「飲みニケーション」がいい

 

部下が、何か悩みを抱えているのか、精神的につらそうだ。ここは1つ、飲みにでも誘ってやるか……。そう考える上司の方も多いと思いますが、ちょっと待ってください。部下の状態が深刻な場合は、逆効果になる場合があります。

「心の病」を抱えた人のつらさは、たとえるなら、38、9度の宿熟を出しているようなもの。会社に来て仕事をするだけでも精一杯なのに、そのあとも拘束されるのは、相当高い負荷になります。ですから、メンタルに問題を抱えた部下の話を聞くなら、勤務時間内を原則とすべきです。

たしかに、お酒の力を借りれば、部下は悩みを打ち明けてくれるかもしれません。しかし、酒の勢いで話したことは、あとで「言わなければよかった」と後悔しやすいもの。また、酒の席の雰囲気で「言わされた」と感じてしまう人もいるでしょう。

それに、上司もお酒が入っていますから、部下の悩みを聞くはずが、「俺も苦労しているんだよ」「だからお前は駄目なんだ」と、余計な愚痴や説教をしてしまわないともかぎりません。

こうした理由から、私はメンタルの悩みを聞く方法としては「飲みニケーシヨン」をお勧めしないのです。

親睦を深めるためなら大いに結構ですが、心に問題を抱えていそうな部下の話を聞く場合は、ぜひ心に留めておいてください。

◇新常識◇メンタルに関する相談は業務時間内で行なおう

 

〔誤解〕その5 ――メンタルに問題を抱えた人に「頑張れ」は禁句

「精神的につらそうな人に『頑張って』と言ってはいけません」という話を聞いたことがあると思います。しかし、必ずしもそうではありません。

先ほどお話ししたように、問題なのは「頑張る」ことではなく、「頑張りすぎる」こと。ですから私は、患者さんに「頑張りすぎないよう、頑張って」と声をかけることもあります。

それに、人によっては「頑張らなくていい」と言われると、自分の存在を否定されたような感じを受けるようです。

もちろん、ハードルの高いチャレンジをさせるのはやめておいたほうがいいですが、「無理をしないように、頑張って」と声をかけるのは、決して悪いことではないと思います。

◇新常識◇「適度に、適当に頑張ろう」とアドバイスをしてもいい

 

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