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子どもの能力を伸ばす「遊ばせ方」

本田真美(小児発達医/ニコこどもクリニック院長)

2011年03月12日 公開 2022年08月17日 更新

 

おもちゃは最高の教師

「楽しい!」「おもしろい!」といった「快感」によって脳内でドーパミンが放出されるということを先にお話ししました。

日常生活の中でもドーパミンを放出させる工夫は大切ですが、それは子どもの勉強でも同じです。ドリル学習だけではなく、おもちゃやゲームを利用すれば、脳内のドーパミンは放出されやすく、知能を鍛えるには効果的です。

「早期教育は虐待だ」とまでいう早期教育反対論者の学者は少なくありません。子どもを授かるまでは、私自身もそうでした。ストレス頭痛の幼稚園児を哀れな日で、それでもお勉強に必死なママたちを白い目で見ていました。

しかし、わずか4~5歳の幼子にお受験という試練を与えた私。紙に書かれた問題に答えられない息子に、「何度言ったらわかるの!」と罵声すら浴びせた私。

我が子をいい学校に入れたいとママたちは必死なのです。我が子かわいさゆえの叱咤(しった)激励です。けれど、大半の子どもにとっては大きな迷惑、大きなストレスなのかもしれません。

試験をクリアした子どもしか通えない国立や私立の学校が存在する以上、早期教育をいくら批判しても始まりません。早期教育反対論者の方々は詰め込み教育に反対し、「幼児期はとにかく子どもを遊ばせるべき。親子遊び、友だち遊びを大切にすべき」と論じます。

早期教育推進者も反対論者も、子どもの真の発達を願っている点は同じです。私は子どもが育つうえで、必要のない遊びも、教育もないと思っています。だったら、遊びながら早期教育をすればいいのです。

息子のお受験が一段落したところで、私はおもちゃコーディネーターの資格を取得しました。そして、おもちゃこそが子どもの発達をうながすのに最適であると確信しました。

ヨーロッパには、本当に子どもの発達が考えられたおもちゃがたくさんあります。ヨーロッパのおもちゃというと、木製でおしゃれで値段が高い、子どもがおもちゃにのめりこみづらいというイメージを抱いている人は少なくありません。私自身もそうでした。

けれど、ヨーロッパではおもちゃに対する意識が非常に高く、幼児期以降のカードゲームやボードゲームも充実していて、子どもが大きくなっても家族でゲームを楽しんでいます。

残念ながら私が息子に与えてきたおもちゃは、子どもの発達をうながすモノとはいえませんでした。最近の日本のおもちゃは、戦隊物、キャラクター物が中心です。ディズニー映画はすばらしい名作ですが、ディズニーもキャラクターの一つなのです。

私世代の親自身がおもちゃで遊んだ経験が乏しいために、子どもの発達によいと思えなくても、子どもが欲しがる物を買い与えて、親子で満足してしまっているのかもしれません。

じつは、日本にもすばらしいおもちゃはたくさんありました。竹とんぼ、だるま落とし、紙風船、コマ…。しかし、それらは民芸品店に並ぶ物ばかりです。残念なことにそれらを知らない日本の子どもは、携帯型ゲーム機にはまるのです。

ゲーム業界は日本が世界一の技術を誇っていて、もちろんこれも文化です。息子は『イナズマイレブン』のゲームに夢中で、ドーパミンも充分に放出させています。

おもちゃを子どもの発達とリンクさせて、上手に使えるかどうかは親の意識の違いだけです。子どもにとっては自分の発達によいおもちゃよりも、テレビの主人公が笑顔で勧めてくれるゲームのほうが魅力的なのですから。

でも、本当のおもちゃを知ると奥が深いです。おもちやとはこういうものなのかと目から鱗です。おもちゃで遊ぶときのコツは3つ。

(1)大人も楽しみながらやること
(2)子どものレベルに合わせてルールをアレンジすること
(3)子どもの鍛えられている能力を意識して「シメシメ......」とほくそ笑みながら遊ぶこと

注意点は、もし子どもができなかったり、やりたがらなかったときに決して怒ったり、無理強(じ)いしたり、あきらめたりしないこと。そうです。子どもの認知特性や発達に合ったゲームであるのか、ルールであるのかを見直すのです。

 

【PROFILE】本田真美(ほんだ まなみ)
1974年、東京都生まれ。医学博士、小児科専門医、小児神経専門医、小児発達医、小児リハビリテーション医。東京慈恵会医科大学卒業後、国立小児病院神経科、国立成育医療研究センター神経科、都立東部療育センターなどで肢体不自由児や発達障害児の臨床に携わる。2010年10月、東京・世田谷区にニコこどもクリニック(http://www.nicoco.jp)を開業。ニコこどもクリニックは病児保育室も併設しており、小児神経外来、発達相談外来、イルカセラピー外来、知育外来、心理カウンセリング、運動支援プログラムなどがあり、専門家による診療やアドバイスが受けられる。おもちゃコーディネーター。2児の母親。

 

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