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Voice 2011年4月号書評から

『Voice』編集部

2011年03月18日 公開 2022年08月17日 更新

『ゴーゴーAi』

海堂 尊 著
講談社/1,890円(税込)
 日本人の大部分は、死亡時に"いい加減な"死亡診断が下されている。解剖率は2%台と、なんと先進国中、断トツで最下位だ。その現状を変えようと、筆者が思いついたのが、小説でも描かれているAi(死亡時画像診断)である。Aiは「中立、平等、透明、迅速」であり、実現されれば「死因不明社会」解決への大きな一歩となるという。
 しかし、導入実現への道のりは遠かった。厚労省官僚と解剖に固執する"解剖至上主義者"による、「徹底的なシカト」「ハシゴ外し」「卓袱台返し」「怪文書攻撃」――。
 本書は、彼らとの4千日にも及ぶ格闘の過程を包み隠さず述べた異色のノンフィクション。患者にはうかがい知れない医療界の生々しい現実を知ることができる。(E・T)

『飛翔への挑戦』

前間孝則 著
新潮社/1,680円(税込)
 ホンダジェットやMRJなど、日本の航空機の新しい取り組みが注目されている。だがたとえば、かつて三菱重工業は自主開発の小型ビジネス機を合計868 機生産したものの、1,800億円の赤字を出して撤退に追い込まれている。リスクは、あまりに高いのだ。そこに挑む、各社の開発責任者の声を集成した本書からは、重責を肩に、夢に挑む男たちの「熱い気概」が溢れ出す。(T・K)

『鉄屑ロマン』

増井重紀 著
世界文化社/1,680円(税込)
 著者は商社を経てアメリカの大手鉄屑会社の経営者となり、現在は新たな鉄屑ビジネスを興している。まさにスクラップひと筋の人生だ。
 アメリカという未知の環境で人心を掌握する苦労、ロビー活動でロサンゼルス市の決定を覆すエピソードなど、ふんだんに盛り込まれた冒険譚を読むにつけ、戦後の日本人がいかに外向き志向で道を切り拓いてきたのか、その軌跡が理解できる。(T・F)

『山県有朋と明治国家』

井上寿一 著
日本放送出版協会/1,050円(税込)
 近代日本の「軍国主義」の創始者として、戦後歴史学は元老・山県有朋に対し、一貫して負のイメージを与えてきた。しかし今日に至るまで、軍隊は国民国家の基礎的条件となっている。明治日本は、徹底した"リアリスト"であった山県がいたからこそ、国家目標であった独立を果たし、対欧米外交を自主的に展開することができた。本書が描く山県像は、いまの政治家の誰にも増して魅了的だ。(T・N)

『純平、考え直せ』

奥田英朗 著
光文社/1,470円(税込)
 主人公の純平は、気のいいチンピラ。尊敬する兄貴分に憧れながらヤクザを夢見る日々。そして突然舞い込んできた組長からの「鉄砲玉」(暗殺)の指令。男になるため決意に燃えた純平は、決行までの3日間、自由時間をもらえることになったのだが......。ある意味、真っすぐすぎる純平の不器用さが、滑稽だけれども温かい本作。さまざまな角度から、現代を巧みに描き出した一冊だ。(M・T)

Voice 2011年4月号

団塊世代が年金受給者となる一方、若者の昇給は抑えられ、新卒者の就職率は過去最低に。日本の未来を担う若者は、既得権益者からいったいどれだけ搾取されているのか――。こんな若手編集者の問題意識から、今月は「『若者厚遇』で世代間格差を破壊せよ」と題する総力特集に。経済の活力を奪う世代間格差の現状を明らかにするとともに、"孫・子にツケを残さない日本"への展望を徹底議論しました。もう1本の特集は、日本人も決して無関心でいられない「『中東革命』で激変する世界」。ほかにもザックJAPAN論など、知的好奇心をくすぐる論考が満載です!

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