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「自分を褒める前に周りに目を向けて」 ヤマモトショウさんがFRUITS ZIPPERの名曲に込めた本音

ヤマモトショウ(音楽プロデューサー)

2026年07月31日 公開

「自分を褒める前に周りに目を向けて」 ヤマモトショウさんがFRUITS ZIPPERの名曲に込めた本音

音楽プロデューサー・ヤマモトショウさんは、「わたしの一番かわいいところ」「NEW KAWAII」など、聴くと自己肯定感が上がると話題の楽曲をいくつも手がけてきました。4月に刊行された『NEW褒めことば辞典』(KADOKAWA)では、日常のコミュニケーションに悩む人に向けて、165語の褒めことばを紹介しています。

今回は、プロデューサーとして人と向き合う際の心がけから、自分自身の認め方まで、ヤマモトさんの言葉への向き合い方を語っていただきました。

 

小さなことでも"十分すごい"と思いながら生きている

――楽曲が"自己肯定感を高める"と評価されることが多いと思いますが、ヤマモトさんご自身は自己肯定感を持っている方だと思いますか?

【ヤマモト】多分低くはないと思うんです。だけど、常にコンプレックスもあって。音楽を小さい頃からやっていたわけではなくて、音楽の授業もわからないし、ピアノも弾けないし。でも音楽は絶対好きなんだけどな、みたいな。なんで自分は音楽ができる人ではないんだろう、といった感覚がありました。その葛藤は今もどこかにありますし、昔はもっとそうだったと思うんですよね。

ただ、「やればなんとかなる」と思えてしまう自己肯定感はあります。自己肯定感を低く持っていても、あまりいいことがないと思うので。小さなことに対しても十分すごくない?という感じで生きてますし、周りに対してもそう思っています。

――その「小さなことでもすごい」という感覚はどこからきているのでしょうか?

【ヤマモト】その瞬間にすべてそう思えているわけでは全然ないですけどね、そこまでできた人間ではないので。「うまくいかなかったな」「なんだこれ、つまんないな」みたいなこともいっぱいあります。

ただ後からそれを考え直した時に、「いや、でもその時に頑張ったこと、やったことって何かに繋がっているよな」と、しっかり後から分析して、考え直すことはやり続けていると思います。あとはもともとかなり楽観的なタイプかもしれないです。

――過去のインタビューで「作詞作曲は自己表現ではない」とおっしゃっていましたが、それでも今お話しいただいたような"小さなことを認める姿勢"は、自然と歌詞に滲み出てくるものなのでしょうか。

【ヤマモト】僕が作っているのはあくまでアーティストの楽曲であって、僕が言いたいことを言う場ではないという考えのもと作詞作曲をしています。アイドルグループを手がけることが多いので、誰か一人の表現でもなく、グループとして発するメッセージである必要があると思っているんです。

ただ、だからといって自分の考えが全く反映されないかというと、そんなことはなくて。グループのコンセプトや表現したいことを一緒に考えていく中で、自然と僕のスタンスが出てくる部分はあると思います。「小さな喜びも認めていきたい」と僕自身は感じているので、「大きな成功しか意味がない」みたいな歌詞を書いてくれと言われたら、それはちょっと難しいですから。

 

褒める技術とは

――さまざまな音楽の現場に関わるなかで、褒めることと厳しく伝えることのバランスで意識していることはありますか?

【ヤマモト】静岡発のアイドルグループ・fishbowlはプロデュースとして関わっているので、できていないことはライブの後などに言ったりもします。でも必ず「良くなると思っているから言っている」ということを、いろんな形で意識的に表現はしていますね。良くなると思っている、良くしたいと思っているということが伝わるように。

あと、fishbowlの新メンバーの野田萌花という子がすごく歌が上手くて、上手いからこそ結構厳しくしてしまうところもあって。もう一人の新メンバーに萌花が「最近、ショウさんにすごい怒られるんだよね」みたいなことを笑顔で言っていたということを聞いて(笑)。ちゃんと意図が伝わっているようだったらいいな、と。

怒ることも、本質的にはその人を褒めていて、より前向きにレベルアップできるように伝えているつもりです。逆にそういう気持ちがなかったら怒りもしないので。

――「褒めることが苦手」な人もいますが、技術的に克服できると思いますか?

【ヤマモト】褒めることが苦手な人は言葉のバリエーションを増やして、ちょっと表現を変えてみるといいと思います。テクニカルにできることではあるかなと思います。僕も結構実践していて、気持ちは伝わると思いますし、ちゃんと工夫していることが分かればそれはそれで嬉しいと思います。結局、褒めることを上達させるにも、真剣に取り組む姿勢が大切ということに集約されちゃうんですが。

――褒めることが苦手と自分で思っている時点でかなり真摯なのかもしれません。

【ヤマモト】そうですよね。例えば、相手の好きなところを10個言ってと言われたら困りませんか。でもそれって、10個挙げることが大事というよりも、いかに真剣にそれに取り組むかが大事なのであって。褒めことばはそのためのツールという感じですね。

 

周りに目を向けた方が「自分を褒められる」ようになる

――自分を褒めることについては、どんな印象をお持ちですか。

【ヤマモト】自分を自分で褒めてあげることも、もちろん大事だと思いますね。ただ、自分を褒めることが自然にできるようになっていく必要があると思っていて。「褒めなきゃ」と思ったらしんどいじゃないですか。だから、周りのものに対して感動したり、それを言葉に出していく中で、例えば「その魅力に気づいた自分はすごいな」って思えたらいいのかなと。

「わたしの一番かわいいところ」ってそういう曲なんです。私の一番かわいいところに気づいているあなたはすごい、それに気づいた私もすごい、みたいな。自分に返ってきているんです。

だから相手というか周りのものを認めていくことで、もうほぼ自動的に自分に返ってくると思うから、無理に自分を褒めなくてもいいのかなと思います。直接的に自分を褒めることはしんどさにも繋がってしまうので。

――近年は「ご自愛」や「自分の機嫌を自分で取る」みたいなコンテンツも多かったですよね。

【ヤマモト】自分を褒めるために何かを探すのは、見つかればいいですけど、見つからなかったら大変で。褒めるポイントが乏しかったとき、かえって自己肯定感が下がりかねない。でも、周りには絶対あるんですよ。そんなに世の中捨てたもんじゃないと思うんで。

例えばふとした景色が美しかったとか、夜空を見上げてみたら星が綺麗だったとか。夜空は綺麗だし、綺麗な星を見つけられた自分も素敵。相手のいいところを見つけられた自分もいいよね、と。そっちの方が自然に自分を認められるような気がしています。

自分で自分に向かってそのまま褒められたらすごいですけど、結構体力がいるんですよね。自分の中だけに見つけようとしすぎると、ちょっと独りよがりになりかねない部分もあって。

自分にいいポイントが100個も200個もそもそもあるんだったら、苦労しないですよね。でも広い世界を見渡せば、すごいものも素敵なものも綺麗なものも可愛いものもいっぱいある。だからまずは周りに目を向けてみることが、自分を認めることへの近道かなと思っています。

著者紹介

ヤマモトショウ

作詞作曲家・音楽プロデューサー

1988年、静岡県出身。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程を卒業。2013年よりバンド「ふぇのたす」のメンバーとして、ギターと作詞作曲を担当。その後、主に作詞作曲、サウンドプロデュースをメインに活動し、シンガーやアイドルなどを中心に楽曲提供をしている。
2024年に『そしてレコードはまわる』(幻冬舎)、2025年に『歌う言葉 考える音 世界で一番かわいい哲学的音楽論』(祥伝社)を刊行。地元静岡でアイドルグループfishbowlを立ち上げている。

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