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[リーダーのコミュニケーション]部下に慕われる心理法則とは

渋谷昌三(目白大学名誉教授)

2013年11月26日 公開 2024年12月16日 更新

《『「この人についていこう!」と思われるリーダーになる心理法則』より》

 

部下と話す機会を増やすだけでいい

 

■よく見る顔ほど好感度は高くなる

 心理現象の1つに、人は、何度も会っている人に対して好意を持つようになるというものがあります。これを「熟知性の原則」といいます。

 たとえば、テレビの連続ドラマで何度も同じ俳優さんを見続けていると、その俳優さんにだんだんと好感を持つようになります。CMでも、繰り返し流されているCMに出ている俳優さんのほうが、好感を持たれやすくなります。

 次のような心理実験があります。

 まず、複数の人の顔写真を入れたアルバムを用意します。このアルバムの中に、Aさんの写真を1枚、Bさんの写真を5枚、Cさんの写真を10枚、Dさんの写真を25枚入れておきます。

 これを見せてから、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんの好感度を言ってもらうと、枚数の多い人ほど、好感度が高くなる傾向が出てきます。

 写真による実験ではなく、実際に会ってから印象を述べる実験でも同様の傾向が出ています。何度も会っている人に対しては、好感を持ちやすくなるのです。

 

■部下と接触する場を作っていますか?

 この熟知性の原則を、部下との人間関係に生かすとしたら、「部下との接触を増やしていく方法」が考えられます。

 毎日、職場で顔を合わせていても、実際の接触時間は少ない場合もあるはずです。何でもメールでやりとりしてしまったり、必要なときにしか話しかけなかったりすれば、それは同じ職場内にいても、あまり顔を合わせていないのと変わりません。職場の中で、フェース・トゥ・フェースで顔を合わせる機会をまず増やしてみましょう。

 アフターファイブに飲みに誘うことも1つの方法ですが、いやがる若手社員もいますから、そんな社員には、さまざまなミーティングにできる限り参加してもらうようにして、話す場を増やしてみるのもいいでしょう。接触の機会が増えるとともに、幅広い業務情報を得てもらうこともできます。
   

フェース・トゥ・フェースで好感度をアップしよう


 

会話には「心を通わせる距離」がある

 

■「パーソナル・スペース」を知ろう

 人はみな、自分の体の周囲に他からの侵入を拒むなわばりを持っています。これを「パーソナル・スペース」と呼びます。

 次のような実験をすると、パーソナル・スペースがいかに重要かということがわかってきます。

 大学の図書館の大きな机で1人で勉強している女子大生のすぐとなりに、誰かが座って女子大生の反応を見てみます。すると、女子大生は落ち着かない態度を示し、肘をついたり、頭を抱えたりして、相手の視線を遮ろうとします。また、相手に背を向けたり、相手との間に鞄を置いたりして、自分のスペースをなんとか確保しようとするのです。それでもダメな場合は、その場から去ってしまいます。

 この実験では、30分以内に70%の女子大生が席を立ってしまいました。女子大生の横に座らなかった場合は、30分以内に席を立った女子大生は10%に過ぎませんでした。

 人は自分の周りにパーソナル・スペースというものを意識していて、その範囲内には、親しい人しか寄せ付けないようになっているのです。

 

■部下との距離にも気をつかおう

 アメリカの文化人類学者ホールは、人間の空間行動に関する研究をプロクセミックスと呼んでおり、日常生活の中での自分と相手の人との距離を、大きく4種類に分けています。

(1)45センチ以内 … 親密な人との密接距離

(2)45~120センチ … 相手の表情が読みとれる個人距離

(3)120~360センチ … ビジネスに適した社会距離

(4)360~750センチ … 個人的な関係が希薄な公衆距離

 職場においては、3番目の120~360センチ程度を確保するようにするといいと思います。

 部下と心を通わせようと思ったときには、居酒屋や喫茶店などに行って、45~120センチくらいの距離を作り出すといいでしょう。
   

部下と話すときは距離感を意識せよ


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