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[リーダーのコミュニケーション]部下に慕われる心理法則とは

渋谷昌三(目白大学名誉教授)

2013年11月26日 公開 2023年01月11日 更新

 

腹を割った話は丸テーブルがいい

 

■丸テーブルで話すと好印象を与える

 会議室のテーブルには、丸テーブル、角テーブル、楕円テーブルなどがあります。このうち、ホンネで話したいときに有効なのは丸テーブルです。

 アメリカで学生を対象にある実験が行われました。丸テーブルを囲んで教授と話し合ってもらった場合と、角テーブルを囲んで教授と話し合ってもらった場合で、教授に対する印象に違いが生まれるかどうかを調べたのです。

 その結果、丸テーブルで話をした学生たちは、教授に対して「公平で、世話好きで、親しみがあり、よく話を聞いてくれ、権威的でなく、オープンな人柄である」という評価をしました。

 一方、角テーブルで話をした学生たちは、教授を「権威主義的であり、攻撃的であった」と評価しました。丸テーブルと角テーブルでは、同じ教授に対する印象が正反対になってしまったのです。

 

■角テーブルは人との境界線を意識させる

 角テーブルの場合は、それぞれの角で辺が分断されています。そのため、他のメンバーに対して境界を感じやすく、自分と他人の違いを意識せざるをえなくなります。それに対して、丸テーブルの場合は、辺が連続しているため、自分と他人との境界をあまり意識することがなく、公平感や連帯感を持ちやすいのです。

 また、角テーブルの場合は、上座と下座が決まっています。通常は、入り囗から一番遠いところが上座で、入り囗に近いところが下座です。座席にランクが決まっているため、座った位置によってそれぞれのメンバーの上下が生まれてしまいます。

 角テーブルでは、メンバー全員が何となく位置関係による上下関係を意識してしまって、下座に座った部下は、あくまでも部下としての立場から話をせざるをえなくなり、ホンネで話をしようという気は起こりにくいのです。

 部下と腹を割ってホンネで話し合いたいのであれば、角テーブルではなく、上下関係を意識させない丸テーブル(あるいは楕円テーブル)で話し合ったほうがいいでしょう。
   

話し合う内容によってテーブルを変えよう


 

嫌いな部下を遠さけない

 

■好きな部下だけを優遇しない

 どんなリーダーにも好き嫌いはあります。好きな部下もいれば、嫌いな部下もいるはずです。しかし、好きな部下だけを優遇し、嫌いな部下を遠ざけていては、やがてはどちらの部下からも尊敬されなくなり、リーダーシップがとれなくなってしまう可能性があります。

 部下を評価するときには、大原則として、「公平さ」を失わないようにしなければなりません。

 好きな部下に対しても、間違っているところは指摘し、嫌いな部下でも良い面はほめる。

好きな部下でも、業績が悪いときには評価を下げ、嫌いな部下が業績を上げたときには正当に評価する。そのような態度が必要になります。

 

■なぜ嫌いな部下だと評価の記述は多くなるのか?

 自分自身で部下の好き嫌いを意識している場合はともかく、はっきりとは意識できていない場合もあるでしょう。そのようなときには、評価の偏りに気づいていない可能性があります。そこで、次のような作業をしてみるといいでしょう。

 紙に、部下の名前を書いて、それぞれの部下の特徴を次々と書き出していくのです。

 研究結果によれば、好きな人よりも、嫌いな人についての記述量が多くなるそうです。一般的に、人は、嫌いな人に対しては、自分に損害を与えるのではないかと考えて、警戒心を高めています。

 損害を未然に防ぐために、無意識のうちに、その人物の様子を詳しく観察してしまいます。その結果、嫌いな人に対しては、記述量が多くなってしまうのです。これは「警戒性の仮説」と呼ばれています。

 部下の特徴について書き出した紙を眺めてみてください。どの部下の記述が多く、どの部下の記述が少なかったでしょうか。記述の多い部下に対して、警戒心を持っているということはないでしょうか。

 ときどき部下のことを紙に書いてみて、自分の心の中に公正さを失わせるような好き嫌いが入り込んでいないか振り返ってみましょう。
   

部下の特徴を紙に書き出して、自分自身の偏りを探れ

 


<書籍紹介>

「この人についていこう!」と思われるリーダーになる心理法則

渋谷昌三 著

いい関係ができていれば、部下は自ずとついてくる。伝える技術、相手の心を察する技術を身につけて、自信あるリーダーに変わろう!

 

<著者紹介>

渋谷昌三 (しぶや・しょうぞう)

1946年、神奈川県生まれ。目白大学大学院心理学研究科・社会学部教授。学習院大学卒業、東京都立大学大学院博士課程修了。心理学専攻、文学博士。山梨医科大学教授を経て現職。非言語コミュニケーションを基礎とした「空間行動学」という研究領域を開拓。その研究成果を、現代心理学に即した正確な記述と、平易でユーモアあふれる文体で解説。
主な著書に、『面白いほどよくわかる! 心理学の本』(西東社)、『人の心が読みとれる心理学入門』(かんき出版)、『「身近な人」との人間関係がラクになる心理学』(大和書房)、『外見だけで人を判断する技術』『使える心理ネタ43』『しぐさで人の気持ちをつかむ技術』(以上、PHP研究所)など多数。

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