《隔月刊誌『PHP松下幸之助塾』より》
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仕事がないというのは、どうにもできんやないですか。経営を預かる者は、仕事がたとえなくても、社内を沈滞させないように考えなくてはいかん。それができるかどうかが、経営者としての分かれ道でしょう。
仕事がないなら、あした一日休め、しかしただ休んではいかん、一日分相撲を取れ。(笑)相撲を取って力を鍛えよ、勇気を鍛えよ。仕事をやっても売れんからというて、きみらの腕を落としてはいかん。腕を磨くためには、外で鉄でも拾ってきて、ヤスリをかけよ。
なんか、そういう積極性のあることを言わにゃいかんのです。経営者というものはどんな場合でも、経営意欲を失うたらあかんわけです。希望をもち、希望をもたせてやらなければいかん。経営者は、こういうときは先頭に立って、みずからの勇気を鼓舞し、従業員の士気を鼓舞して、何かを与えるんです。仕事がなければ、仕事以外のものを与える、後日プラスになるものを与える。
それでも、なんにもないというなら、掃除でもしろ。掃除にはぞうきんが要るが、ぞうきんが減るというのだったら、足でやれ。足は減らん。それは冗談やけど、それくらいのことを言い、与えるだけの勇気をもつ経営者が、これからのほんとうの経営者なんです。ともにシュンとして、困ったなと言っておったら、悪くなる一方です。
出典:PHP総合研究所研究本部編『松下幸之助の経営問答』(PHP文庫)