夕食後すぐに就寝すると病気になりがち? トップアスリートも実践する白木流「養生訓」
2016年02月08日 公開 2024年12月16日 更新
からだの疲れは寝て取り除き、脳の疲れは運動で取る
6時に起きたら、まず軽く運動をする。ラジオ体操なら3分ほどですむ。それから、できればシャワーを浴びて目を覚まさせ、朝食をとる。食欲がなければ水でもかまわない。野菜をとるなら、自家製野菜ジュースか温野菜がいい。起きてすぐの胃は、ぜん動運動がまだ活発になっていないので、消化に時間がかかる生野菜はやめておいたほうがよい。
昼は、そばやうどんではなく、しっかり咀嚼できる食べ物をおすすめする。咀嚼が脳を活性化させ、記憶力を向上させるという。仕事の効率が上がるのはもちろん、うつや認知症の予防もできるといわれている。
私の場合、パンとコーヒーだけの軽い朝食が多いので、昼食は大学の食堂か近くの喫茶店などで、しっかりとるようにしている。そして午後の仕事をこなし、帰宅して8時ぐらいまでに夕食をとるようにしている。体重が気になっていれば、炭水化物を減らしてもいいし、お酒が好きな人はこのときに飲んでももちろんいいだろう。ポイントは、アスリートもそうでない人も、「夕食後から寝るまでのあいだを4時間ほどあけること」なのである。
睡眠時間は人それぞれだが、私の場合は、よほど疲れていなければ5時間睡眠が基本だ。
運動して疲れていたら7時間寝る。それ以上になると、からだが硬くなって痛くて目が覚めてしまう。
アスリートのなかには10時間寝ることで調整する選手もいるので、一概に時間の目安はいえないが、8時間睡眠がいいといわれるようになってから、無理をしてでも睡眠時間を確保しようとする人がいる。しかし、朝から晩まで仕事に追われ、残業もあるビジネスマンや、子どもを育てながら仕事を持つ女性など、現代人はみなそれぞれ忙しい。『養生訓』には、寝すぎないこと、昼寝をするなと書いてはあるが、寝る時間までは書いていない。自分の生活と折り合いをつけた、自分なりの睡眠時間を見つけることが必要である。
『養生訓』には、昼寝を避けるべしと書かれている。だが、激しいスポーツや徹夜で仕事をぶっ続けでやったあとなど、からだが極度の疲労状態にあるときは、むしろ昼寝をして体力を回復するほうがよいこともある。
からだの疲れは寝て回復するが、脳の疲れをとるには、寝るのではなく、横になって目をつむる時間をつくる。あるいは逆に、からだを動かして脳は使わず頭のなかを空っぽにすることで回復する。長距離ドライバーはからだをいっさい動かさずに長時間座って運転しているので、まったく運動量がない。そのため、仕事を終えて帰宅しても、脳だけが覚醒したまま就寝すらできない。そうしたドライバーは、寝る前にジョギングをしたりスポーツジムに行き、あえてからだを疲れさせるのだという。
海外試合が多いプロアスリートや、世界を回る商社マンやツアーコンダクターなど、時差のある生活をする人も多くなった。サッカー選手などは、飛行機を乗り継いで約20時間、着いたらすぐに試合という場合も多く、飛行機のなかでコンディションを整えなければならないこともある。時差ボケしないためには、現地に着くまで飛行機のなかで眠らないこと。
たとえ飛行時間が30時間でもだめである。そして、現地に着いたら現地の夜になるまで眠らないようにするのだ。ジョギングやショッピングでもいいので、外にいて太陽にあたること。これも大事だ。
<著者プロフィール>
白木 仁(しらき・ひとし)
筑波大学大学院人間総合科学研究科教授。日本体育協会公認アスレティックトレーナーマスター。1957年、北海道生まれ。79年、筑波大学体育専門学群卒業後、大学院に進学。その後、スポーツトレーナーとして活躍。多くのトップアスリートのコンディショニングを行なう。2000年のシドニー五輪などでは、シンクロナイズドスイミング代表チームのトレーナーとしてメダル獲得に貢献する。そのほか、各種学校や医療施設などで幅広く講演活動を行なう。著書・監修書に、『ジュニアゴルファーのための“一流になれる”からだの作り方、練習の仕方』(宝島社)、『白木式コアトレ ベーシックメソッド』(学研パブリッシング)など多数。