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経営とは「継栄」である~宗次德二・カレーハウスCoCo壱番屋創業者

『衆知』編集部

2016年10月01日 公開 2024年12月16日 更新

 

人のお役に立ち、喜んでもらう

私は両親を知りません。生後、尼崎市の児童養護施設にいました。3歳の時、養父母に引き取られましたが、養父はギャンブルに夢中で養母は家出。養父と2人で電気・水道もない廃屋を転々としながら、夜はロウソクを灯して生活していました。食べるものにも事欠き、時にはイタドリのような雑草が主食でした。

15歳の時に養父が胃がんで亡くなると、名古屋にいた養母と同居。豆腐屋で朝早くからアルバイトをしながら、なんとか高校を卒業しました。

不遇ではありましたが、不運だとは思いませんでした。ただ、養父と過ごした幼少期は、誰からも相手にされることなく、本当に孤独でした。

脱サラして喫茶店を始めた時、「お客様の笑顔」を見て、少なからず自分は人の役に立っているということが嬉しくて、「商売は、面白い」と思い、夢中になりました。

その後、妻がつくるカレーが評判になって、29歳でカレー専門店をつくったのが「カレーハウスCoCo壱番屋」のスタートです。

毎朝5時前に起きて会社に行き、掃除。それから、1000枚を超えるお客様からのアンケートを読みます。出張の日は、帰社後、徹夜して目を通しました。1日平均5、6件の店舗・営業所・工場の巡回をして、お客様の反応を見たり、スタッフの指導にあたりました。

何事もスピードを大事にし、即断即決即実行。間違いがあれば躊躇せず「朝令朝改」です。モットーは「ニコニコ、キビキビ、ハキハキ」で、接客については妥協しませんでした。

趣味を持たず、友達を一人もつくらず、妻と二人三脚でひたすら事業に没頭してきました。お蔭様で、「店舗数が世界一のカレーチェーン」として、ギネスにも認定され、53歳の時に生え抜きの社員から後継者を選び、経営から身を引きました。「本当にやりきった」というのが正直な実感でした。

社長の仕事とは何かといわれたら、利益を上げて社会貢献をすること、社員の給料を上げることです。それが何よりの社長の喜びであり幸せ。そのためには、毎期、増収増益すること。もちろん、景気の波があり、お客様のニーズも常に変化しますから簡単なことではありません。しかし、「超現場主義」「超お客様第一主義」「超率先主義」を実践すれば、決して難しいことではないと思います。経営の出来不出来は、世の中のせいでも、誰のせいでもありません。すべては社長自身の姿勢次第です。

経営とは、「継続して栄えること」、つまり「継栄」です。そのために、社長は全身全霊でみずからの人生をかけて経営をすべきでしょう。

「人のお役に立ち、喜んでもらう」、これが私の人生の指針。今は大好きなクラシックを一人でも多くの人に楽しんでもらうことが生きがいです。

マネジメント誌『衆知』2016年9・10月号、宗次德二「PHP言葉志録」より転載。

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