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「これ以上引きずらない」ためのストレス対処法

伊藤絵美(臨床心理士)

2016年10月27日 公開 2023年09月12日 更新

自分を助ける対処法をひたすらリストアップ

 以上を踏まえたうえで、ストレスの対処法を考え、50個でも100個でも、できるだけ多くリストアップしてください。多種多様なストレスに応じて有効なコーピングを選択するには、レパートリーが多いことが重要です。

「『お前も大変だな』と心の中で慰めてみる」「宝くじが当たったと妄想する」「毎朝大きな伸びをする」など、ごくささやかなことで十分。「『竜馬がゆく』を読む」から「坂本竜馬の生涯に思いをはせる」「高知へ旅行に行く計画を立てる」など、派生させていくのもいいでしょう。また、「好きなラーメンを食べる」ではなく、「六本木の○○の塩ラーメンを食べる」「新宿の△△の味噌ラーメンを食べる」など、より細かくしていくこともポイントです。

 重要なのは、これらのコーピングを実践し、その効果を検証すること。リストを常に持ち歩き、ストレスを感じる場面があれば、その中から1つ選んで試してみる。効果があればそれを続け、効果がなければ別のコーピングに切り替えてみる。こうしてコーピングを意識的に繰り返すことで、さまざまな場面でストレスに対処できるようになります。何より、「自分にはストレスに立ち向かう方法がある」と思えれば、それだけで気持ちはかなりラクになるはずです。

 そもそもストレスは、「シマウマがライオンを見つける→ストレスを感じる→逃げる」といった、生き延びるために、ある瞬間だけ出る反応でした。しかし、文明社会となった今、私たちは刺激に囲まれ常にストレスを感じています。言い換えると、ストレスを感じずに生きることはできないのです。ならば、できるだけストレスを感じないよう対処をすることが、今の世の中でより健やかに生きる方法と言えるでしょう。

《取材・構成:塚田有香》
《『THE21』2016年10月号より》

著者紹介

伊藤絵美(いとう・えみ)

洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長

精神科クリニックや民間企業でメンタルヘルスの仕事に就いたあと、2004年より現職。オフィスでのカウンセリングの他、企業研修やセミナー、ワークショップなども開催。慶應義塾大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。臨床心理士。精神保健福祉士。公認心理師。著書に『ケアする人も楽になる 認知行動療法入門』『ケアする人も楽になる マインドフルネス&スキーマ療法』(ともに、医学書院)などがある。

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