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生き方

なぜ、「負の感情」に振り回されるのか?

枡野俊明(建功寺住職/庭園デザイナー)

2016年12月06日 公開 2024年12月16日 更新

「無心」で組めば、不安や焦りは消え去る

ストレスフルな現代社会において、心の平静を保つことは難しい。失敗にとらわれ、将来に不安を感じ、他者に苛立ち、自分を責める──そうした感情を整理し、疲弊する心を解放する知恵が、「禅」の教えには満ちている。数々の著書を通してわかりやすく禅の思想を説く枡野俊明氏に、その極意をうかがった。

 

結果への「執着」が自分を苦しめる

 現代の日本企業は、目標を設定し、それを達成すべく社員を追い立てるシステムで動いています。そのため、与えられた目標を達成できなければ、自分を責めて自己嫌悪に陥ったり、無茶な目標を与えた上司に怒りを感じたりしてしまう。そんな負の感情に振り回される自分を「弱い人間だ」と感じてしまう人は少なくないでしょう。

 特定の事象や感情にとらわれてしまう心の働きを禅では「執着」と呼びます。

 たとえば、「目標を達成しよう」という向上心。向上心自体はいい感情なのですが、想いが暴走すれば、目標を達成できない自分へのいら立ちが募ってきます。すると、向上心は汚い手を使ってでも目標を達成したいという欲望にすり替わってしまいます。これではもう、結果に執着しているだけです。

 さらに欲望は膨らみ続け、もっと出世したい、もっと高価な品が欲しい……と、いつまでも「不満足」な状態が続きます。

 結果的に、感情の振れ幅が大きくなり、そのぶんだけ苦しみも大きくなってしまうのです。では、どうすれば感情をコントロールできるのか。それにはまず、「知足」を知ることです。今あるものに喜びを見出し、「これでよし」とするという教えで、苦しみから逃れるヒントになります。よりよいものを求め、情報や商品を比較検討することに慣れた現代人が見失いがちな視点ではないでしょうか。

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大切なのは、仕事を「自分の色にする」こと

著者紹介

枡野俊明 (ますの・しゅんみょう)

曹洞宗徳雄山建功寺住職

1953年、神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー、多摩美術大学名誉教授。大学卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。また、2006年「ニューズウィーク」誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。近年は執筆や講演活動も積極的に行う。

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