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生き方

なぜ、「負の感情」に振り回されるのか?

枡野俊明(建功寺住職/庭園デザイナー)

2016年12月06日 公開 2023年09月12日 更新

大切なのは、仕事を「自分の色にする」こと

 とはいえ、現代の会社組織に生きるビジネスマンは、与えられた目標を達成せずに「これでよし」とは言い難いもの。ですが、目標と上手に折り合いをつけて心穏やかに過ごすことは、不可能ではありません。「今、できること」に無心に取り組むのです。

 禅の世界では、目標を先に設定してそれを達成すべく努力するという、一般社会とは反対の考え方をします。「今、できること」をそのつど一心に行なっていけば、結果は自ずとついてくる、という考え方をするのです。

 先の目標のことばかりを考えると、どうしても「できなかったらどうしよう」などといった未来に対する不安が過ぎってしまい、目の前の仕事に集中できなくなるもの。すると、自分の持つ本来の力を発揮できなくなってしまうのです。

 一方、目の前にある仕事に無心に取り組めば、未来に対する不安にさいなまれずに集中することができます。結果的に、目標を達成しやすくなるのです。

 さらに、無心に物事に取り組み続けると、与えられた仕事や目標に対する「やらされ感」が薄まってきます。人はどうしても、与えられた仕事や目標に対して、「なぜ、私がこんなことを……」といった不満を抱きがちです。しかし、目の前の仕事に没頭することができれば、「こうすればもっと上手にできるのではないか」「もっと時間の上手な使い方を覚えよう」などと、自分なりの試みを楽しんで行なうことができるようになります。

 これを私は、「仕事を自分の色にする」と呼んでいます。自分らしい方法で目標を目指す過程で、仕事に独自の持ち味が出てくるのです。これによって、人から命じられた仕事であっても、「主体性のある仕事」に変えることができ、それに加え、周囲の信頼という「結果」もついてきます。

 自分ならではの方法で一心に今と向き合うことで、いつの間にか自分を振り回していた感情を忘れていることでしょう。

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坐禅は「無心」に至る最高のトレーニング

著者紹介

枡野俊明 (ますの・しゅんみょう)

曹洞宗徳雄山建功寺住職

1953年、神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー、多摩美術大学名誉教授。大学卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。また、2006年「ニューズウィーク」誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。近年は執筆や講演活動も積極的に行う。

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