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京都・聖護院八ッ橋総本店の「おもてなし」~新ブランド「nikiniki」の挑戦

マネジメント誌「衆知」

2017年02月20日 公開 2017年02月20日 更新

鈴鹿可奈子 株式会社聖護院八ッ橋総本店 専務取締役
すずか・かなこ。京都市生まれ。京都大学経済学部卒業。在学中にカリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。信用調査会社勤務を経て、2006年聖護院八ッ橋総本店に入社。長い歴史と伝統の味を守り受け継ぎながら、新しい商品づくりに努めている。2011年には新しい形で八ッ橋を提供する新ブランド「nikiniki」(ニキニキ)を立ち上げた。

 

伝統精神を受け継ぎ、新たな魅力をお客様に 

「nikiniki」(ニキニキ)という京都に誕生したお菓子のブランドがある。白とパステルグリーンを基調としたおしゃれな店舗のショーケースに、鮮やかな色彩の商品が並ぶ。形も大きさもデザインも可愛らしいものばかりだが、なんとそれらは京都土産で定番の八ッ橋・生八ッ橋からできているという。このブランドを展開するのは、誰もが知る老舗「聖護院八ッ橋総本店」。はたして新たに立ち上げた狙いとは。「nikiniki」のプロデュースも行なっている同社専務取締役の鈴鹿可奈子さんにうかがった。  

取材・文:荒木さと子
写真撮影:白岩貞昭

 

ターゲットは定めつつも店側がお客様を選ばない

鈴鹿さんが思う「おもてなし」とはどのようなものだろうか。その問いに、鈴鹿さんは「一人ひとりのお客様の気持ちを考えること。そしてそのためには阻害しないこと」と答え、あるエピソードを添えた。

聖護院八ッ橋総本店で修学旅行生をターゲットにチョコレートを使った若者向けの商品をつくろうとした時のこと。鈴鹿さんは10代のお客様に受けそうなポップなデザインの包装紙を複数提案した。しかし、社内会議ですべてボツ。理由は「若い人に向きすぎ」とのこと。社長の教えはこうだった。「ターゲット設定はもちろん大事。でも、うちはいろいろなお客様が会社に信頼を置いてくださっている。一方向を向きすぎて他のお客様のことを阻害してはいけないよ」。 

鈴鹿さんが経営学の基礎で学んだのは、ターゲットを決めてそこに集中すること。「自分が習ったこととは違うなあ」と、その時は言葉の意味するところがよくわからなかった。 ところが、実際に「nikiniki」をプロデュースしていく中で、鈴鹿さんはその意味を実感するようになる。立ち上げ当初、地元の若い世代、特に女性に向けたブランドということで、包装紙はピンク色にしてリボンをかけようと考えていた。けれども、京都の街にピンクは馴染まないと思い直し、グリーンに変更した。

その後、「nikiniki」のお客様には予想以上に高齢の女性客や男性客がいることがわかった。鈴鹿さんは、その時初めてこれが「阻害しないこと」だと腑に落ちたという。「もし包装紙をピンクにしていたら、高齢の女性や男性のお客様から、自分たちが行く店ではないと思われたかもしれません。でも、グリーンなら自分たちでも買える、そう思ってくださったのでしょう」。 

どんな方でも店に入ることができて、商品を見てもらえる。それが「おもてなし」の第一歩だと、鈴鹿さんは考えている。「入ってみたけど、この店は自分のほうを向いていないと感じたら、お客様は悲しい気持ちになると思います。そういうことはしないのが大前提です」。ターゲットを定めつつも、それ以外のお客様の気分を害さない。最初から阻害するような商品をつくらない。そう心がけている。 つまり、「おもてなし」とは相手のことをどれだけ考えるかにかかっていると感じている。「例えばお茶事では、その時のお正客によってお菓子や道具が選ばれます。お正客におめでたいことがあったなら、それにちなんだお軸を床にかけたり、お料理やお菓子を工夫する。また、お正客が好きなものを用意する。それらはどれも相手のことをよく知っていなければできないことですよね」。鈴鹿さんは「おもてなし」のあり方を、茶道で学んだ心にたとえる。 

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「人と地元を大切に」 

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