「思い出すこと」が記憶力につながる
「思い出す力」をアップさせるためのトレーニングについてもご紹介しましょう。
記憶には、「繰り返し」が不可欠です。それも「最初に覚えたとき」を思い起こしながら反復することが重要です。
会議の直後や、本を読み終わったときには、その内容を書き出す、人に説明するなど、反復の機会を積極的に作りましょう。
すると、意外に多くを忘れていることに驚くはずです。前述の通り、ワーキングメモリの容量には限りがあるからです。思い出せなければ、会議のアジェンダや本の目次の手助けを借りるとよいでしょう。
こうして何度も「思い出す」ことを繰り返せば、思い出す力そのものが上がります。つまり思い出す力を強化するには「思い出すクセをつけること」、これが最強の策なのです。
「思い出す」ための3つのポイント
1.焦らない
むやみに焦ると、ただでさえ少ないワーキングメモリがそこに割かれてしまうので要注意。ワーキングメモリは、現在進行形の「思考」にも使われる。焦りによって「思い出す」という思考作業に手が回らなくなると、いよいよ思い出せなくなって泥沼にはまる。
ここで必要なのは、「人はすぐ忘れる」と自覚すること。「ワーキングメモリの容量は少ないのだから、忘れても当然」と、落ち着いて構えるところからスタートしよう。
2.フックを探す
「思い出すきっかけ」となるフックを見つける手立ては、自分の知識や経験を探ること。電話番号などを思い出すための「語呂合わせ」も、本来無意味な数字に、自分の持つ語彙や知識を結びつける仕掛けだ。
「場所」も強いフックになる。人にとって場所は「ここに天敵がいる」など、サバイバルに直結する情報だったため鮮明に残りやすい。一度会った人の名前や会話の内容を思い出すには、それを経験した場のイメージを思い浮かべるのが近道だ。
3.「周辺の情報」から探る
たとえば、ある俳優の顔は浮かんでいるのに名前が出てこない、というとき、「名前が思い出せない、名前、名前……」などと、思い出せない部分に焦点を当ててもムダ。空白になっている部分を検索しても情報は出てこないからだ。視点を広げて「覚えている部分」を呼び起こそう。この場合なら、名前そのものではなく、その俳優の出演していたドラマやCMなどの周辺の情報を思い浮かべる。周辺情報に光を当て、芋づる式に名前の記憶を引き出すのがコツだ。