「相互信頼」の理念にもとづき、世界の女性の美に貢献する~株式会社ワコール
2017年12月26日 公開 2017年12月26日 更新
創業理念を堅持しつつ時代の変化に対応
安原 ただ、一般的に見て、会社と個人との関係は、時代とともに変化してきたと思います。例えば、昭和20年代に生まれた団塊の世代の価値観は、「我慢」「辛抱」でしょう。「我慢すれば、辛抱すれば、いつかよくなる」という思いで生きてきたから。それに対して今の若い世代は、「我慢をしてもよくならない。辛抱するよりもスマートに、便利に、素早く環境を変える」と考える人が増えているようです。
鈴鹿 そうした時代の変化に対応して、意識して変えていこうと思われていることはありますか。
安原 創業理念である「女性を美しく」とか「相互信頼」といった根幹の部分はしっかりと守りながら、「働き方」とか、「お客様とどのような関係をつくっていくか」という部分について、よりよいかたちに変えていこうとしているところです。これは経営をしていく上で、ごく当たり前のことだと思っています。
鈴鹿 時代が変わっても変わらない部分と、時代とともに変えていく部分があるということですね。
安原 変えなければいけないところを変えられなかったら、会社の将来はなくなります。いわゆる「ヒト・モノ・カネ」をどう活用していくか、そこに情報をどう絡めていくか、さらに将来を予見し、それに対して先手を打っていけるかというところが、一番求められているのだと思います。厳しい環境の中でも成長を続けることで、ステークホルダーの皆さんからの期待に応えたいと思います。
鈴鹿 今おっしゃった「働き方」について、もう少し具体的にお聞かせいただけますか。
安原 昨今の「働き方改革」と絡んでくる話ですが、一言でいえば「社員の評価の基準が変わる」ということです。かつての日本では、「あの人は朝早く出社して頑張っている」とか、「夜遅くまで残業して」「休日出勤までして」といった具合に、時間軸で働きが評価されていました。いわゆる「モーレツ社員」が高く評価されていたわけです。
しかし、これからはこの評価の仕方を根本的に変えていかないといけません。「夜遅くまで残業したり、休日出勤したりしなければならないほど、生産性が低い」というふうに、見方がまるで反対になるわけです。限りある労働時間の中で、いかに効率よく計画的に働くかが求められる時代になりました。
鈴鹿 社員の方の声はいかがですか。
安原 いろいろな職場で残業の状況について話を聞いていると、若い社員は「部長が残って仕事をしているのに先に帰れない」と言い、逆に部課長クラスは「部下が頑張っているのに先に帰れない」と言ったりします。ですから、私は部長や課長たちに、「君たちが率先して早く帰宅しなさい。そのほうが部下の能率はずっと上がるぞ」とアドバイスするようにしています。
残業だけでなく、無駄な会議や余分な書類を減らしていくことも重要です。ある社員が言っていたのですが、以前からつくるのが習慣になっていた書類について、本当に必要なのかどうか疑問に思い、試しにつくるのをやめてみたそうです。そのうち指摘されるかと思ったら、誰も気づかないままだった。ということで、その書類はなくなりました。そういう無駄が減れば減るほど、生産性は高まっていきますよね。
鈴鹿 その社員の方は面白い実験をされましたね。思わぬところに無駄が潜んでいるのだとよくわかりました。
※本記事は、マネジメント誌「衆知」9-10月号特集《特集「スピードで勝機をつかむ」》より、一部を抜粋編集したものです。