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ローソンのCSRとBCP(事業継続計画)

マネジメント誌「衆知」

2018年03月13日 公開 2018年03月13日 更新

国内1万3000店、海外1000店を擁するローソングループ。売上は2兆円を超え、人々の日常生活に浸透したコンビニエンスストアであるだけに、その動向は社会に大きな影響を与える。同社のCSR(企業の社会的責任)とBCP(事業継続計画)について、コンプライアンス・リスク統括室室長の吉田浩一氏にお聞きした。
 

"マチ"とともに歩み、"マチ"とともに暮らす

年3回の訓練で防災意識を高める

2003年から、CSRの取り組みの一つとしてBCP(事業継続計画)をつくり始めました。作成以来毎年改定しています。

トピックの一つとして、東日本大震災をきっかけに年2回の防災訓練を3回に増やしたことが挙げられます。全国を8エリアに分け、毎年、9月1日(関東大震災)、1月17日(阪神・淡路大震災)、3月11日(東日本大震災)は、曜日に関係なく、必ず訓練を実施しています。

訓練では、オーナー、従業員およびローソン社員の安否確認、被害状況の把握を、電話・メール・災害用伝言ダイヤル・自社の安否確認システムなど、様々な手段によって行ないます。実際にこれらを使ってみることで、万一の際にも各人がスムーズな対応をとれるようにしているのです。

また、店舗には、災害時に必要となる備品や対応マニュアルを配備しており、店によっては仮設トイレの設置や発電機の始動、レジの電源確保などのテストも実施。想定される被害は地域によって異なるため、訓練の中身は本部が事細かく指示するのではなく、各現場で必要と考えたことを実践するようにしています。
 

非常時の迅速な対応を可能にした権限委譲

当社のBCPの特長は、社長がトップに位置づけられていない点です。重大な被害を伴う緊急事態が発生した場合、CR(Compliance & Risk Management)管掌役員が決裁権を持ち、対処します。

緊急時にはスピードが求められます。逐一経営トップにおうかがいを立てていては、対応が追いつかないケースも考えられます。へたをすると組織が麻痺して動かなくなってしまう。

現場にこそ、これまでに何度も最前線に立ち、苦労して蓄積してきた知恵とノウハウがあります。そういうベースを持っていないと、とっさの時の判断はなかなかできないものです。

そこで、非常時対応も、権限をCR管掌役員に委譲したのです。これによって、迅速に、かつ柔軟に緊急事態に対応できる体制を整えました。

いざ災害となればシナリオ通りにはいきません。想定外の事態が起きることを前提に、ものごとに対処していかなければならない。ですからやれるところからしっかりやっていこうというのが私たちのスタンスです。

2016年の熊本地震の際には、熊本県を管轄する配送センターが大きな被害を受けて機能が停止しました。しかし、過去の災害の教訓によって改善を重ねたシステムで、被災していない配送センターから代替配送を行ないました。

被災店舗の早期営業再開のために、全国の本部社員らを派遣し、店舗の被害状況の確認、破損した什器や商品の片付け・整理、清掃を実施。商品の納品やレジ対応などの店舗営業のサポートも行ないました。

こうした対応が素早くとれたのも、CR管掌役員に権限が委譲されていたことが大きかったと思います。

※本記事はマネジメント誌「衆知」連載「CSR経営実践のヒント 第4回:"マチ"とともに歩み、"マチとともに暮らす」より、その一部を抜粋したものです。
 

吉田浩一(よしだ・こういち)
1986年株式会社ローソン入社、2009年同社コンプライアンス・リスク統括室室長、2013年より同社コンプライアンス・リスク統括室兼情報セキュリティ統括室室長(現職)。このほか、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会安全対策委員会委員長(委嘱)、NPO法人日本経営倫理士協会(常務理事)、NPO法人事業継続推進機構(理事)、関西広域連合 緊急物資円滑供給システム協議会(委員)を務める。

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