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客家大富豪の教え「嫉妬は成功の敵、愛嬌は成功の素」

甘粕正(投資会社経営)

2012年01月30日 公開 2022年12月22日 更新

成功する者の愛橋とは

お互いに礼をした後、アメリカFRB(連邦準備制度理事会)の会議で使うような、楕円形のテーブルを挟んで着席した。第一声を発したのは、王氏である。

「ウォンさん、ご無沙汰しております。本日は、わざわざお越しいただいてありがとうございます」

まるで、王氏自身が銀行の一員であるかのような挨拶である。後で聞いたところによれば、王氏は香港ロンドン銀行の重要顧客であり、追加融資もほとんど無条件で受けることができるらしい。

また、ヘンリー・チョウは、私が銀行を辞めた後すぐに香港ロンドン銀行にヘッドハンティングされ、そこで王氏と出会ったということだ。銀行時代にはまったく知らなかったのだが、ヘンリー・チョウも客家で、王氏の引き立てもあり、今では香港ロンドン銀行の大幹部に出世しているらしい。

王氏は、並んで座っている他の役員のことはあまり気にせずに、話を進めた。

「早速ですが、先日来の懸案だった、日本の沖縄への投資プロジェクトの件。銀行役員との合議の結果、全面的にご協力させていただくことになりました」

もしかして、先日の宮里弁護士というのは、この件に関係しているのだろうか。

「それは、よいお返事をありがとうございます」

ウォン氏は満足そうにうなずいている。

そのプロジェクトというのは、シンガポールに続いてカジノの合法化が期待されている日本の沖縄に投資をしようというものである。もちろん、日本でのカジノが合法化されることが前提だが、彼らはその時期は近づいていると考えているようだ。

また、当初解禁される候補地には東京や沖縄があるが、過去、中国ではマカオ、シンガポールではセントーサ島とマリーナベイが選択されている。そのため、首都東京よりも、首都から離れたリゾート地である沖縄がまず選択される可能性が高いと踏んでいる。

もちろん、カジノ施設をいきなり建設しようというわけではない。沖縄にはもともとリゾート・アイランドとしての発展の可能性があるから、まず、ホテルやショップなどのリゾート関連のビジネスをスタートさせて、カジノが解禁されるまでにカジノ・ビジネスの外堀を埋めてしまおうという作戦である。

この方法なら、万が一カジノが解禁されなくても、リゾート・ビジネスとして充分収益を上げることができる。

「ところで、このプロジェクトの担当者は、お隣に座った方ですかな?」

王氏は、まるで私と初対面のような口調でいった。

すると、ウォン氏が私にこう語りかけた。

「どうだろう、あなたの事業プランとは違うが、そのかわり100億円どころか、数千億円単位のプロジェクトになる可能性を秘めている。やりがいのある仕事だと思わないかね?」

私の事業プランがすぐに使い物にならないことは、もう充分わかっている、これだけの大プロジェクトに関わることができるだけでもありがたいことだ。私は、「もちろん、喜んでお引き受けいたします」と、答えた。

その後しばらく雑談し、迎えの車に乗って、フォーシーズンズホテル香港に戻る。ウォン氏は、まだしばらく香港で用事があるとのことだったので、まずは私一人で沖縄に向かうことになった。残念ながら、その頃、香港-沖縄直行便は運休していたので、香港-台北-那覇ルートの飛行機を手配した。

 

【PROFILE】甘粕正(投資会社経営)
静岡県に生まれる。同志社大学卒業後、外資系金融機関に就職し、先端金融商品関連で活躍。その際に稼いだ資金を元手に飲食店経営など実業に進出。その事業が困難な局面に達したとき、不思議な縁で客家の老人と出会い、ビジネスの極意を伝授される。現在は、自らの投資会社を経営する傍ら、多数の企業の取締役、顧問などを務める。 

 

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