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生き方

「定年後」は50歳になったその日から始まる

楠木新(神戸松蔭女子学院大学教授)

2018年06月05日 公開 2023年01月12日 更新

50歳になった時点で定年後を意識している人は1割にも満たない

それでは定年後の予備群である50代の会社員はどのように考えているのだろうか?

「あなたには、職場以外の友達はいますか?」
「あなたには、趣味といえるものはありますか?」
「銀行を辞めた後、部下が義理で食事に付き合ってくれるのはせいぜい二年ですよ……」

これは池井戸潤氏の『花咲舞が黙ってない』の冒頭で、花咲舞の上司である芝崎次長が、第二の人生を歩むための「たそがれ研修」を受けて、何を今さらと嘆く場面である。

従来は、50代後半にもなると、定年後を見据えてライフプラン研修を実施する会社が多かった。受け取る公的年金の計算や財産管理を怠らないこと、健康に留意することなどをテーマにしている。労働組合が実施している例も多い。

ただ最近は、50歳以降になってもどのようにイキイキと働くか、というところに重点を置いた研修も増えている。

この背景には、2013年(平成25年)の高年齢者雇用安定法の一部改正で65歳までの雇用責任が事業主に義務づけられたことや、バブル期の大量入社世代が50歳を越えたことがある。そのため、中高年社員の活性化を狙って研修の対象とする社員の 年齢も下げている。

このような流れから、私も会社や労働組合から講演や研修を依頼されることがある。グループワークを中心とする研修では、事前の準備として、「5年後のありたい自分」「10年後のありたい自分」を記載して研修に臨んでもらう。

50歳過ぎの社員であれば、「5年後のありたい自分」は、概ね役職定年になってラインの第一線からは降りた時点、「10年後のありたい自分」は、定年を迎えた時点になる。その時に自分はどうありたいかをグループごとに互いに話し合ってもらう。

実際に研修を担当して感じるのは、50歳を過ぎた時点で定年後のことを具体的に描いている人は極めて少ないということだ。1割もいないだろう。

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なぜ定年後になって初めて会社や仲間の大切さに気づくのか

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