40年間続いた「若者の活字離れ」。書店店長が今、思うこと
2018年07月17日 公開 2022年06月22日 更新
活字離れのはずが、売上は増え続けた出版業界
はじめて「若者の活字離れ」という言葉が使われ始めたのは一九七七年ごろだと言われています。
それから現在にいたるまで、約40年もの間、活字離れが進んだことになります。
「若者」という定義は曖昧ですが、元となる統計のサンプルを見ると、20歳前後の大学生が対象となっています。
最初に「若者の活字離れ」と言われた当時の20歳の若者は、40年の時を経て、現在では還暦を迎えようとしています。
その事実を知った時、僕も驚いてしまいました。活字離れも高齢化が進み、現役と言われる世代の全てが、「若者の活字離れ」に当てはまると言えるのです。
でも、果たしてそうなのでしょうか?
「活字離れ」が言われるようになった前半の20年間は、"生活様式の変化"が、その主な理由として挙げられることが多かった時代です。
1977年の日本経済は、国際収支が過去最高を記録するなど好調で、レジャーや娯楽が多様化していった時期でした。
ピンク・レディーが全盛期を迎え、テレビゲームが登場しはじめ、『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)が書籍年間売上第一位を獲得しています。
「活字離れ」に拍車がかかった大きな理由として、人々の〝生活の多様性〟が挙げられるのも、確かと言えるでしょう。
一方、後半の20年といえば、バブル経済が崩壊し、景気の後退期に入ってゆく1990年代中盤以降のことで、日本は大きな転換期を迎えました。
雇用体系や賃金体系が大きく変わり、消費動向にも変化が現れました。時間に追われ、生活を維持するだけで精一杯という時代となります。
経済成長の上り坂を登りきり、緩やかに下り坂を下り始めた現在では、自宅の書斎でのんびりと読書をするという時間や空間は、もはや贅沢や嗜好の部類に入るのかもしれません。
この後半の20年間の「活字離れ」は、新聞や本を読む〝時間の減少〟が主な理由として語られてきました。
それは、出版販売額を見ても明らかでしょう。「活字離れ」の前半の20年間までは、出版販売金額は右肩上がりで増え続けてきました。