「恐怖心は誤魔化せる」死と隣り合わせのフランス軍で学んだこと
2018年10月03日 公開 2018年10月03日 更新
<<外国籍の兵士で構成される"フランス外人部隊" 。6年半、在籍した日本人がその経験を記した書籍『フランス外人部隊』(角川新書)が発刊された。
パラシュートの降下訓練、海外派兵。常に死と隣り合わせの環境に身を置いた著者の野田力氏。自らの経験を丁寧に語る同書の一節から、"フランス外人部隊"の実情とその思いが見えてくる。>>
アフガニスタンからの帰還
外人部隊での五年契約の満期は二〇〇九年十月に迎えることになっていました。
最初の五年契約を終えると、半年単位で契約を更新できます。アフガニスタン派遣の任務を受けられるようにするため、一年半、契約を延長して二〇一一年四月の除隊予定になりました。
海外派遣から戻ったあとの半年間は除隊できない決まりがあるだけでなく、除隊前の半年間は例外を除いて作戦に参加できなくなります。ケガを避けるためにパラシュートの降下練習もしてはならないということで、監視する側の役割に就くようになりました。
その半年はやや微妙なポジションにいたわけです。そのあいだ、何もできずに退屈だったのかといえば、そんなことはありません。行軍に参加したり、医療支援の役割で射撃訓練に同行するなどして、それなりに充実していました。
この時期でとくに思い出に残っているのはドイツ軍やベルギー軍との合同演習が外人部隊のパラシュート連隊で行なわれたことです。そのときも飛べなかったのは残念でしたが、指導する側の助教として彼らと交流できたのです。
アフガニスタンに行く前に上級伍長になっていたので、この頃には雑用をする必要もほぼなくなっていて、楽しく半年を過ごせました。
アフガニスタンに行ったことに関しては、個人的にはマイナス点を思いつかないほどよかったと思っています。これまでの人生において、もっとも充実した日々だったとも振り返ることができます。もちろん、大きなケガなどをすることなく、無事に帰れたからこそ、そういえるのだとはわかっています。
アフガニスタンに行って人間として成長できたのかといえば、自分ではわかりません。アフガニスタンで人生観が変わったというようなことはなかったと思います。ただし、外人部隊をきっかけに変わったことはあり、その延長線上にアフガニスタンがあったといえるのかもしれません。小さなことは気にしなくなり、大胆になった気がします。
いざという場面を迎えたときに、逃げずに向き合える自信をもてました。
死生観や覚悟といった大げさなことではありません。目の前のやるべきことをしっかりやろうと考えていれば、恐怖心は誤魔化せるというだけです。少なくとも私はそうでした。