「異常な高齢社会」を生きるために~國松善次(健康・福祉総研理事長、元滋賀県知事)
2018年10月29日 公開
2017年、都道府県別の平均寿命で、滋賀県の男性が長寿日本一になりました。かつて滋賀県庁の健康福祉部長であった私には、とても感慨深いものがあります。
今から40年前、滋賀県庁厚生部(当時)の次長だった私は、認知症と高齢者介護を取り上げた有吉佐和子さんの『恍惚の人』(新潮社刊)を読み、大変ショックを受けました。この本がきっかけで、高齢者介護が全国的に社会問題になったほどです。将来、超高齢社会が到来するだろうといわれて、このままでは大変なことになると思いました。
「課題解決は現場にあり」が信条だった私は、高齢者介護施設でスタッフとして、24時間一緒に介護をさせていただきました。特に排泄のお世話をするスタッフの方には、本当に頭が下がる思いでした。
ある時、福祉先進国であるデンマークやスウェーデンには「寝たきり老人」がいないと聞き、すぐに現地視察に赴きました。
現地で学んだのは、健康管理は自己責任・自己防衛が基本であり、本人の覚悟と努力が必要だということ。それを前提にセーフティーネットとして、社会保障があるということでした。
私は帰国すると、まず部署の名称を「厚生部」から「健康福祉部」へ改称するように提案しました。中央官庁からは「前例がない」と反対されましたが、当時の知事に賛同を得て実現しました。もちろん、全国では初めての試みでした。そして、みずから「健康生きがいづくりアドバイザー」の資格を取得しました。
その後、滋賀県知事に立候補して当選し、二期務めました。任期中には、国が稲作の減反政策を推奨する中、農薬や化学肥料の使用を半減した農業を全国に先駆けて条例で支援するなど「環境こだわり県」を目指し、また障害者や高齢者・子供の福祉でも地域密着の福祉を行なう「くらし安心県」を目指すなど、「元気な滋賀県づくり」に取り組みました。
現在は、栗東市を皮切りに「100歳大学」の普及啓発に努力しています。
入学資格は65歳と66歳で、期間は1年間です。老化や認知症の予防、生活習慣の改善、生きがい、地域ボランティアなど、約40のカリキュラムで毎週1回授業をしています。
もちろん、私自身も普段から健康づくりを心がけています。
知事時代からずっと、エレベータやエスカレータには乗らずに、階段を上り下りしています。琵琶湖一周250キロサイクリングを毎年実施しており、70歳からはマラソンを始めて東京やホノルルのマラソンも完走しました。
日本は、世界に例をみないスピードで、超高齢社会になりました。いずれ国民の4割を高齢者が占める「異常な高齢社会」が到来します。100歳まで健康で過ごすためには、国に依存するのでなく、一人ひとりが自助努力を心がけたいものです。