「保険は難しい」という声をよく耳にする。だが、保険が家計に占める割合は大きく、老後に向けて「保険の見直し」は不可欠であるだけに、わからないでは済まされない。
「保険はお守りがわり」などとも言われるが、じつは「生命保険」に入ったところで、病気にならないわけではないし、死なないわけでもない。「生命保険」には、病気で入院(通院)したり、死亡したらお金が出るという、お金の支払い機能しかないのだ。
本稿では、こうした「生命保険」の基本について、経済評論家の荻原博子氏が解説する
※本稿は、『保険ぎらい』(PHP新書)の内容を一部抜粋、編集を加えたものです。
生命保険は、命と健康を賭けた"不幸クジ"
生命保険は、ひと言でいえば、"クジ"のようなものです。
こう言うと、「変なことを言うやつだ」と不審に思われるかもしれません。でも、これは事実です。皆さんは、「保険=困ったときに頼りになるが、複雑でわかりにくいもの」と思い込んでいるのです。
けれど、生命保険が、命と健康を賭か けた"クジ"のようなものだということが理解できれば、誰もが「えっ、そんな簡単なことだったのか」と思うはず。
"クジ"では、まずみんなからお金を集め、"クジ"に当たった人だけが、みんなから集めたお金をもらって終わります。外れた人には、払ったお金は返ってきません。
じつは以前、テレビで、「生命保険は"宝クジ"と同じ仕組み」と言ったら、生命保険協会の広報担当から抗議がありました。「生命保険を、当たったら嬉しい"宝クジ"と一緒にするとは何事か!」と言うのです。
そこで、生命保険協会の広報担当の方と2時間ほど話しました。
私の主張は、「みんなでお金を出し合って、その中で死んだり病気になった人が、みんなのお金をもらうのだから、"クジ"と同じでしょう」。
一方、生命保険協会広報部の主張は、「仕組みは同じかもしれないが、みんなが喜ぶ"宝クジ"と一緒にするのは、人の不幸を喜んでいるようなもので不謹慎だ」。
こんな調子で、あーでもないこーでもないと言い合いましたが、最後には私も折れて、「わかりました。私はもう絶対に、『生命保険は"宝クジ"と同じ仕組み』などとは言いません。これからは︑"宝クジ"でなく︑生命保険は"不幸クジ"だと言います」。
それで一件落着し、以来、私は「生命保険は"不幸クジ"」と言っています。
前置きが長くなりましたが、生命保険は、みんながお金(保険料)を支払い、その年に死んだり、病気入院(通院)した人がそのお金をもらいます。そして、また翌年には新しくみんなでお金(保険料)を支払い、"不幸クジ"を引きます。
"不幸クジ"を引くというのはたんなるたとえで、実際には不幸な目に遭うということですから、"ババを引く"と言い換えたほうがいいかもしれません。
ですから、病気1つしない健康な人は、お金(保険料)は毎年支払うのに、お金(保険金や給付金)がもらえないということになります。