鹿児島発のM&A巧者 「インフラ関連事業の複合企業体」が成長し続ける理由
2019年01月31日 公開 2019年02月26日 更新
<<公共事業予算の縮小が続く土木・建設業界にあって、成長著しい企業があります。鹿児島に本社を置くコンクリート二次製品メーカーのインフラテック株式会社。
成長のドライブはM&A。世の中にM&A巧者は意外なほど少ないもの。統合にこぎつけても、事業シナジーが発揮できないパターンも多く、中には後年巨額の損失を計上してしまうケースさえあります。
そのようななか、インフラテックは3年間で6社を買収、グループ売上を170億円から285億円に急伸させました。中堅企業から大企業への飛躍に自信をのぞかせます。
同社の松﨑秀雄社長は、京セラの稲盛和夫名誉会長の薫陶を受け、M&A手法を再現する人物。そのサポート役でありご子息の松﨑慎太郎副社長。お二人にM&Aを成功させるノウハウ、経営思想を伺います。>>
3年間で6社をグループ会社化する
――御社のコンクリート二次製品は、世の中のどのようなところで役に立っているのですか?
松﨑社長 わが社では、道路の側溝や下水を流す地下の暗渠用の製品、あるいは宅地造成の際に使う擁壁などをコンクリートで作っています。これらは社会のインフラを下支えする製品です。
また、コンクリート製のビルの壁材もあり、地元・鹿児島県庁舎にも使われています。建築、土木のさまざまなシーンで、世の中のお役に立っていると思います。
このようなコンクリート二次製品づくりが本格化したのは、戦後からです。わが社が創業したのも昭和31年(1956年)です。最初は建築用の軽量ブロックをつくっていましたが、鹿児島県は農業が盛んな県だったため、農業土木用の水路をつくるようになります。
そして田中角栄さんの「日本列島改造論」が話題になったころ、国は社会整備基盤に積極的に取り組みます。そこで道路の側溝など、道路関連の仕事が増えていきます。
それを目当てに、全国に雨後の筍のごとく、コンクリート二次製品メーカーが立ち上がった。ところが「小泉改革」以降、日本では国も地方自治体もどんどん公共事業費を削減するようになる。
つまり、ここ20年ほど、コンクリート二次製品メーカーにとっては非常に強いアゲインストの風が吹き続けているのです。結果、経営が厳しくなり、立ち行かなくなる会社がどんどん増えてきています。
――そのように市況が厳しくなり、業界の変革を迫られる中で、業績が厳しくなった会社や後継者問題を抱えている会社をM&Aして、立て直しを図っておられるのですか。
松﨑社長 われわれが積極的に「M&A戦略」を取るようになったのは2013年、いまから6年ほど前からです。今日まで6社にグループへ加わってもらっています。このうち1社は橋梁の建設会社で異業種ですが、他の5社は同業者になります。
そして各社に対し、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)から伝授頂いたアメーバ経営やフィロソフィ教育を駆使することによって、M&Aした時点よりも業績の良い状態に変えていくという形で頑張っています。
またこのM&A戦略について京セラの稲盛和夫名誉会長から、「歴史や社風がまるで違う会社をまとめるのは大変。だから、闇雲に会社を大きくするのではなくて、本当にお互いの考え方、フィロソフィを同じくするようなことをやらなくてはだめです」とご助言頂き、肝に銘じております。
そこで、わが社の経営理念をM&Aした相手先の会社に浸透させることに、一番の力点を置いています。