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鹿児島発のM&A巧者 「インフラ関連事業の複合企業体」が成長し続ける理由

松﨑秀雄(インフラテック株式会社代表取締役社長)、松﨑慎太郎(同副社長)

2019年01月31日 公開 2019年02月26日 更新

「脳トレ研修」「脳トレ朝礼」

――経営管理をきちんと行い、数字の「見える化」をすると、新たにグループに入った会社の皆さんにも、気づきを与えることができると思いますね。

松﨑社長 「自分たちはこれだけしか収益をあげられていなかった、会社に貢献していなかった」と、経営者意識に変わっていきます。もともとアメーバ経営自体が、チームリーダーはもちろん、一般社員が、経営者意識を持って仕事をするための「仕組み」です。その効果を発揮し始めるのです。

さらに、経営幹部クラスへの「リーダー教育」については、稲盛名誉会長の経営の真髄を学びながら、経営者同士が切磋琢磨する場である「盛和塾」を活用してきました。

私を含めてグループ全体で、盛和塾生が全国で17名います。東北の仙台塾や東京塾、さらには大阪塾など、全国各地の塾に所属していて、先輩塾生である他企業の経営者の皆さんから、経営の基本を教えて頂いているのです。

その成果として、29歳で入塾した仙台営業所の所長が、2年目には盛和塾世界大会の東北エリアの仙台塾代表で発表したのには驚きましたね。

このようなことを盛和塾の仲間の経営者に話すとびっくりされます。「社長以外にも幹部社員をどんどん入れていって、そこで学ばせるといいですよ」という話をしていて、今後もM&Aによって新しくグループに加わる会社の経営幹部の方々に盛和塾に入ってもらい、他社の経営者と切磋琢磨してもらうつもりです。

――「盛和塾」をリーダー教育に活用するとは、眼からウロコが落ちる話です。

松﨑社長 さらに2018年の1月から、脳科学者の岩崎一郎先生に「脳トレ研修」というのを毎月実施して頂いています。東京と大阪と鹿児島で8名ずつ、グループ会社横断的に。

稲盛名誉会長のおっしゃっていることが脳をどう活性化させ、人のモチベーションを高めるか。また、多くの社員のモチベーションがアップした結果、組織がどう変わり、業績の向上につながるかということを、脳科学の観点から分析・解説して頂く。

M&Aによって新しくグループに入った会社の社員の方々にも受けてもらい、意識をどんどん変えていっているところです。

松﨑副社長 社長が話したことに付け加えますと、岩崎先生の研修では、稲盛名誉会長の教えの実践編として、例えば「皆さんでお互いを勇気づけし合いましょう」「過去の辛い経験をみんなで共有して、それによって団結力を高め、集合知性を発揮しましょう」というようなテーマでの、グループワークをたくさん行います。 

ここで難しいのは、「相手の良いところや可能性」に意識が向けられる脳を鍛えることです。相手のいいところを本当に見つけて、フィードバックしなければならない。

単におだてたり、機嫌を取ったりでは、見透かされてしまいますから。このような訓練を、グループ会社のリーダーたちに対しても行っています。

――「脳トレ朝礼」というものも聞きました。

松﨑副社長 わが社の『経営理念手帳』には、「挑戦する風土づくり」「お客様と共に成長する」「心をひとつにして全員で取り組む」など、101項目のメッセージがまとめられています。それを順番に毎朝、皆で輪読し、担当者が「この理念を、私はこう考えます」と発表してきました。

これに対して岩崎先生から、「抽象的、観念的なメッセージが多く、聞いている社員がイメージしづらいのでは」との指摘を受けたのです。

そこから、なるべく過去の体験談を具体的に話してもらうように変えました。内容は、仕事に関することでもプライベートの出来事でも何でも構いません。

そして、発表に対する上長のコメントについても、これまでは「あなたのこういうところは素晴らしいです」などと、発表者の話のいいところを具体的に見つけ出し、フィードバックしてもらうように変えました。「脳トレ研修」で学んだことを実践する朝会にしたのです。

――こんな風にさまざまな改革をすると、元のオーナー社長から「物言い」がつきませんか?

松﨑社長 元のオーナーには経営に対する思いが強い方もおられるので、そのようなケースもあります。その際は、貴重なご意見として拝聴しています。「意識を変えてほしい」と言っても、なかなか難しいですから。

わが社のM&Aは全部、私が直接出向いて交渉し、波風を立てないやり方を取ってきました。そこで元オーナーのご意見は伺いつつ、ナンバー2の方への説明、意識改革に力を入れています。ナンバー2の方に「脳トレ研修」に出てもらったり、盛和塾に入ってもらったりしているのです。

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