「がん」になると病院を信じられなくなる理由 医師と患者の圧倒的な「情報格差」
2019年04月12日 公開 2024年12月16日 更新
<<2人に1人ががんに罹る時代。世間には「医療否定」「がんの自然治癒」など、世の中には数多の主張や説があふれ、「本当に選ぶべき治療」「信頼できる医師」がわからなくなっている。
その結果、不運にも治せる病気が治らなくなってしまったり、効果が証明されていない治療に高額を費やしたりしてしまう患者さんはあとを絶たない。
大場大医師は、外科医と腫瘍内科医という二つの資格を持ち、手術の執刀から抗がん剤治療、緩和ケアまでを臨床現場の最前線で経験してきた稀有ながん治療の専門医。
その大場医師が日本の「がん医療不信」の原因を探りつつ、正しい「がんリテラシー」を身につける必要性を語る。>>
※本稿は大場大著『東大病院を辞めたから言える「がん」の話』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
なぜ、がん医療不信が蔓延しているのか
昨今のがん医療現場において、主治医の説明が理解できない、納得がいかない、信頼関係が築けないという鬱憤に端を発し、信じがたい不幸な医療事故ニュースが目立つようになってきました。
それに歩調を合わすかのように、数多くの医療否定本が書棚に並ぶ風景も相まって、「病院のがん医療は信用できない」といった論がことさら強調されるようになってきているようにみえます。
とても残念なことですが、いつ頃からか「ヒポクラテスの誓い」(医学の祖とされるヒポクラテスが医療従事者の倫理を説いた教典)や「医は仁術」という言葉で表現されてきた医療倫理やモラルは衰退し始め、利益ばかりを追求する医師の数が増加の一途を辿っているのはおそらく事実でしょう。
例えば、自称「名医」がお手製の免疫療法を法外な金額で扱っていたり、患者さんには調子のよいことをいって、実際の抗がん剤の投与量や方法が滅茶苦茶であったり。
サプリメントや漢方薬、あるいは食事療法などに代表される民間療法で「がんが消える」と平然と言い切ってしまう者や、診療科によっては、大病院の勤務医であっても、標準治療ですら正しく選択し、安全に実践できない医師も少なくないようです。
同じ医師の資格を有しているとはいえ、誰にでも安心して医療を任せることが難しい世の中に変わりつつあるのは非常に由々しき問題です。