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遺伝はたったの5%!? 人が「がん」にかかる理由

長尾和宏(医学博士、医療法人裕和会理事長)

2019年04月13日 公開 2024年12月16日 更新

<<医師の長尾和宏氏は、自身は抗がん剤治療は受けたくないと思っていたが、その後、遺伝子検査の研究が進み、効く薬が事前に予測できるようになってきたことで考えが変わったという。

しかしながら、そもそもなぜ人は「がん」になってしまうのか? いまひとつ知られていないその理由を、長尾氏が著書『抗がん剤が効く人、効かない人』で示している。ここではその一節を紹介する。>>

※本稿は長尾和宏著『抗がん剤が効く人、効かない人』(PHP新書)より一部抜粋.編集したものです。
 

がんは遺伝子の傷によって起こる病気

私たちの体は、約37兆個の細胞でできているそうです。そもそも1個の受精卵が分裂を繰り返し、60兆個もの細胞になって身体ができあがるのです。

そして60兆個もの細胞のなかには、あるところで分裂を終了して分裂しなくなる細胞と、分裂を繰り返す細胞があります。

分裂を繰り返す細胞は、自身の持つDNAをコピーしながら分裂していきます。

ところが、タバコや紫外線、化学物質、ストレス、バランスの悪い食事など、さまざまな要因でDNAが切れたり壊れたりなどすると、遺伝子に傷がついてしまう。

DNAとは、「デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)」の略称で、細胞の核の中にあり、「二重らせん構造」といわれるように、2本の鎖が絡まり合ったような構造になっています。

さらに、この2本の鎖は、「糖」、「リン酸」、アデニン.チミン.グアニン.シトシンという4種類の「塩基」で構成された「ヌクレオチド」という単位がズラズラと並んでできています。

そして、この4種類の塩基がさまざまな順番で並ぶことで、たんぱく質の設計図が描かれているのです。たんぱく質は、私たちの身体を作り、生命活動に不可欠なもの。つまり、塩基の並び方が、生命の設計図を表しているということ。

ごくごく簡単に言えば、長いDNAはいくつもの区画に分かれており、一つひとつの区画にたんぱく質の設計情報が描かれている。その一つひとつの「区画=設計図」が、「遺伝子」と呼ばれています。

 

がん遺伝子は誰でも持っている

では、話を戻しましょう。

さまざまな環境要因で遺伝子に傷がつくことがあるという話でした。

この遺伝子の傷は、通常はその都度ちゃんと修復されるのですが、細胞が分裂(コピー)を繰り返すうちに、傷ついたままの遺伝子がコピーされてしまうことがあります。

そのコピーミスがいくつか重なった結果、がんになるのを促進する「がん遺伝子」のスイッチがオンになったり、細胞ががんになるのを防いでくれる「がん抑制遺伝子」が働かなくなったりして、がん細胞が生まれてしまうのです。

ちなみに、がん遺伝子もがん抑制遺伝子も誰もがもともと持っているもの。がん遺伝子は数百個、がん抑制遺伝子は100個ほど見つかっています。

さて、ここまでの話をまとめると、がん細胞は、DNAのコピーミスの結果生まれ、無限に増殖しますが、人間が亡くなるのとともに自分も死ぬ。なんだか不思議な存在です。

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「遺伝性のがん」よりも「後天的な遺伝子の傷」

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