<<ネット、アルコール、買い物、甘いもの、恋愛、ブラック企業……「やめたいのに、やめられない」こと。やめたほうが良いことは分かっていても、なかなか止められない。
そんな自分を変えるにはどうしたら良いのでしょうか?
汐街コナさんの著書『ずっとやめたかったこと、こうしてやめられました。』は、さまざまな依存症やプチ依存から抜け出した人たちと依存症専門医に話を聞いた、脱・プチ依存コミックエッセイ。
ここでは同書で紹介されている事例の一部を紹介します。>>
※本稿は汐街コナ著・大石雅之監修『ずっとやめたかったこと、こうしてやめられました。』の内容の一部を要約し、記事化したものです。
恋人がいないと行きていけない「恋愛依存体質」
「一人になりたくない。どうか見捨てないで……」
恋愛依存に陥り離婚した経験を持つSさんは、いわゆる束縛男(ソクバッキー)でした。
Sさんに初めて恋人ができたのは15歳のとき。
毎日彼女に電話をかけ、「いま何してるの?」「昨日はどこに行っていたの?」「誰と会っていたの?」と質問攻めにしていました。
今となってはストーカーに近い行為だったと自覚できるものの、当時は「見捨てられたくない」という一心で彼女の行動を追っていたと言います。
当然のことながら、Sさんは振られてしまいました。しかし、常軌を逸するほど「一人になりたくない」という思いが強かったSさん。
その後もすぐに次の恋人を作り、また振られるというプロセスを繰り返し、15歳から38歳まで一度も相手がいなかったことがなかったと言います。
Sさんはこう話します。
「恋人がいないのは僕にとって『死活問題』なんです。恋人がいないと生きていけなかったんです」
「嫌われるんじゃないか」という不安感から、相手を束縛してしまう
Sさんの場合、恋愛依存体質の引き金となったのは両親の離婚です。
母親が家を出ていったのは、Sさんが生後一ヶ月の頃。当時の状況を覚えているわけではないものの、「女性はいつか自分を置いて去っていくもの」という前提が頭にあったそう。
大人になり女性と付き合っても「嫌われるんじゃないか」「見捨てられるんじゃないか」という不安が常にあり、「相手をまったく信用していなかった」と言います。
そしてSさんはそんな「いつか嫌われるんじゃないか」という気持ちを確かめるかのように、わざと相手を試すような嫌なことをするようになったのだそうだです。
例えば、クリスマスのデートですごく良い雰囲気でデートが終わりそうだったのに、最後にわざと「浮気しただろ!」とありもしないことを言い、雰囲気を壊すようなことをするのです。
「なんで一人になりたくないのに、自分から関係を壊すようなことをするんですか?」と尋ねると、Sさんはこう応えてくれました。
「自分でもおかしいとわかっているんです。なのに、止められない。一人になりたくないと思いながら、「早く壊したい自分」がいるんです。
僕は、いつか相手から見捨てられるのが怖くてたまらなかった。相手から見捨てられるくらいなら、自分から壊して”ほーら、やっぱりダメだった”と自分で自分に言いたい気持ちがあるんです」
誰からも愛されず、一人寂しく過ごしているのが本来の自分。交際が長く続きそうなときは、自ら関係を壊すような行為に走っていました。
その根底にあるのは「自己肯定感の低さ」。自分で自分のことを誰からも愛されない人間だと思っていたのです。