投資家ジム・ロジャーズの衝撃予測「日本の老後保障の資金は底をつく」
2019年08月03日 公開 2022年05月31日 更新
<<世界的投資家として知られるジム・ロジャーズ氏。不安定な世界情勢と金融市場の影響もあり、その著書で『お金の流れで読む 日本と世界の未来』(PHP新書)がベストセラーとなり注目が集まっている。
ロジャーズ氏は同書において、かつてと姿を変えてしまった日本を憂いつつ、その将来を大いに不安視している。特に国の借金が膨れ上がり続けているにも関わらず支出を増大させることやめないことで、将来の日本人にツケを回してる、という。そして日本の若者に不幸な状況に…。
ここでは同書より、現在の経済環境が続いた場合に、日本の10歳の子どもが40歳になった時に起こることに触れた一節を紹介する。>>
※本稿は『お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する』(ジムロジャーズ著、大野和基訳 PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
どれだけ国の借金を増やしても、返済するのは自分の世代ではない
現在日本は、国と地方を合わせて約1100兆円、実にGDP比約2倍という目もくらむような借金を抱えている。それにもかかわらず、安倍政権は必要のない道路や橋造りに金をつぎ込んでいる。
増税までして、さらに無駄な公共事業へ資金を投入しようとしている。借金をこれだけ増やしても平気なのは、返済するのは自分の世代ではないと考えている証拠だ。
50年前の日本はこうではなかった。貯蓄率も世界一で、国債もほぼゼロだった。それがこの50年でがらっと変わったのだ。
実際、日本が消えてしまうといってもそれは10年、20年後のことではない。いま中年の大人たちが老人になった時でも、日本の国庫には老齢人口を支える資金くらいは残っているだろう。
しかしその後──いま10歳の子どもたちが40歳になる頃には、彼らの老後を保障する金は尽きている。
インフレが進行して苦しむのは若者と高齢者
経済学者の中には、「インフレになれば借金は目減りするから問題ない」と言う人もいる。確かに理屈としては正しいのだが、長期にわたるインフレで物価が上がり続けることは、国民にとっていい解決策ではない。
大きなインフレ、特にハイパーインフレが起こる国は、たいてい崩壊する。確かにインフレを起こして借金を目減りさせることはできるが、それによって多くの人は深刻な苦しみを味わうことになる。
特に苦しむのは、高齢者や若者だ。逆に財を成す人もいるが、ほとんどの人はインフレが進行すればするほど苦しむことになる。
もちろん、緩やかなインフレは、解決の一助となりうる。しかし緩やかに起きるということは、誰もがインフレに合わせた調整の方法を学んでしまうということでもある。それでは、経済がダイナミックに発展しているとは言えないだろう。
歴史を遡ると、インフレによって急に景気づいた国はない。経済発展というのは、国民が一生懸命働き、貯蓄率を高くして、投資率も高くして、お金を儲けることによって起きるものである。経済が活発化している国はどこも、インフレに依存していない。
そういう意味で、インフレは借金を減らす方法にはなるかもしれないが、借金問題を解決するには最悪の方法である。
「インフレになれば借金は目減りするから問題ない」と言う経済学者は間違っている。ただ、特に目くじらを立てる問題ではない。経済学者のほとんどは、たいてい間違っているものだから。