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「はかる」から進化し続ける業界リーダー・タニタの成長戦略

マネジメント誌「衆知」

2019年08月19日 公開 2023年10月04日 更新

活動量計を社員証に

まず、活動量計のほかにも、社内に設置してある体組成計や血圧計で体重、体脂肪率、筋肉量、血圧などの変化を定期的にチェックするようにルールを設けました。計測データは専用サーバに自動転送されますので、計測していない人は一目瞭然。その場合は、使用を促すメールが送られます。

また、楽しんで取り組めるように、歩数を競うバーチャルゲームや、歩くことなどでポイントが貯まる仕組みもつくりました。チーム同士で競い合ったり、集めたポイントで賞品がもらえたりするので、みんな進んで活動量計を持ち歩くようになりました。現在は社員の家族にも活動量計を配布し、家庭でも楽しく取り組めるようにしています。

さらに、どうすれば社員にいつも活動量計を身につけてもらえるか。いろいろと試行錯誤した結果、活動量計を社員証にしてしまいました。セキュリティーキーとして各フロアの施錠を解除するのに必要で、身につけていないと社内の部屋を行き来することすらできません。これにより、携帯率は飛躍的に上昇しました。

また、メンタルヘルスの向上にも取り組んでおり、ストレスチェックのほか、スマートフォンを通じて声からストレス状態をはかるシステムも導入しました。

これらはいわば、社員の心とからだの健康状態を「見える化」する仕組みづくりです。「はかる→わかる→気づく→変わる」という健康づくりのPDCAサイクルがうまく回るように工夫を凝らすこと。それが弊社の健康経営のベースです。
 

自治体や法人に向けた医療費適正化プログラム

商品改良が目的で社員に配布した機器ですが、計測を続けると、その効果は社員の健康データに如実に表れました。2008年当初、特定健診受診者九六名のうち、一六名がいわゆる「メタボ」に該当していましたが、2年後には7名に減少したのです。

ならば医療費も下がっているのではないかと思い、健康保険組合に弊社の医療費データを開示してもらうと、思った通り、この2年間で、医療費は自社比で約9パーセント、健康保険組合比では約18パーセントも下がっていることがわかりました。

これがメタボ解消の成功事例として、平成24(2012)年版の厚生労働白書で取り上げられ、翌年の「健康寿命をのばそう! アワード」で厚生労働大臣最優秀賞受賞につながりました。そして、平成26(2014)年版の厚生労働白書でも「健康寿命の延伸に向けた最近の取り組み」として再び紹介されることとなったのです。

こうした外部からの評価を受けて、思い至りました。「私たちが培った健康経営のノウハウは、健康増進や生活習慣病の予防に取り組んでいる他の企業などでも、“医療費を適正化するソリューション”として広くご活用いただけるのではないか」と。

そこで、元々個人向けに販売していたシステムを自治体や法人に向けたサービスとしてパッケージ化。現在、この「タニタ健康プログラム」の採用件数は約150件となっており、今後ますます広まっていくことが期待できます。

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