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元中日ドラゴンズ”仁村兄”が直面した「不条理」…今、笑顔で語る理由

仁村薫(元プロ野球選手),真田幸光(愛知淑徳大学教授)

2019年11月21日 公開 2022年07月08日 更新

 

「監督だったらどうする?」という視点

農業では、持っている田んぼをどうしていくか、その判断をするのはすべて自分です。

個(監督)としての決断と決心という覚悟が求められます。ですから、植え付けをして、日々観察をし、ちょっとまずいなと感じたらすぐに手直しをします。

うちの土地は、父親の祖父の代から農業をやっているため、だんだん土壌成分がなくなってきています。だから、私の代で土壌を変えていく必要があると思いました。なぜなら美味しい米を作りたいという志があったからです。

農業の土壌の改良と育成は、野球でいえば選手育成です。土壌づくりは堆肥づくり、そして、こまめな水管理で寒暖の差をつけることが大切です。
たしかに、そんな手間ひまかけずとも、しっかり出来上がっている土地、地方もあります。

野球でいえば、毎年優勝争いする球団のようなものです。しかし弱小球団の監督には全てその「一」からやる義務があります。私が今やっている農業は、まさにその「一」です。 

そこで私がやっているのは、まずは田んぼの一部から少し割高になるけど、今までと違う肥料を入れてみようということです。特に今年は農業をはじめて6年目なので、誰もやったことがないことにチャレンジしたいと思いました。

うちには精米機があるので、精米の過程でできる糠を田んぼに入れて糠の有機農法に挑戦しています。その土地は今、少しずつその成果をあげています。

田んぼに「水は冷たいか、よく眠れるか」「栄養は行き届いているか」……と話しかけています――正に選手との対話です。

農業というのは正直大変なことも多いものです。しかし、それを楽しむ心、夢のあるものに変えていけるのも自分だけです。

自分の実生活の農業と野球を、もし自分が監督だったらというイメージでやっていく――そんなふうに、農業を野球と結びつけながらやっている(農業と野球のシーズンサイクルにも共通性があると感じています)と、自分がやっていた野球がさらに身近なものに感じられて、楽しくなってきます。そんな時、やはり私の心の郷は野球だと感じるのです。

農業も野球の指導者も共に私を成長させてくれる場だと思っています。

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