"タワマン被災"で注目のトイレ事情 なぜ人は「便」の話題を避けるのか?
2019年10月30日 公開 2023年01月18日 更新
巨大台風がもたらしたタワーマンションの浸水被害で改めて浮き彫りになった「トイレの重要性」。排水管があふれることによってトイレが流せない、使えない、と住人の生活は相当な不便をきたしたと伝えられている。
ところが、トイレの話は表立って話をしづらいという思いを抱く人は多い。トイレのことで困っていても、表沙汰にしたくないという感情が先に立ち解決が遅れていく…。
日本に限らず世界的にも存在する「トイレをタブー視する風潮」に疑問を投げかけ、トイレ事情の改善を通して世界を変えようとしている男がいる。「ミスター・トイレ」と呼ばれ、WTO(世界トイレ機関)の創設者であるジャック・シム氏だ。
彼は具体的にどういう思いで、どんな活動をしているのか? 同氏がこのたび上梓した著書『トイレは世界を救う』では、彼のユニークな社会変革を追い、世界各国の「ウンコ情勢」や「世界トイレの日」制定までのドラマを紹介している。
ここでは、同書よりジャック・シム氏のトイレにかける思いを語った一節を紹介する。
※本稿はジャック・シム著『トイレは世界を救う ミスター・トイレが語る 貧困と世界ウンコ情勢』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
世界で最も問われることが多い質問「トイレはどこですか?」
"トイレは世界で最も幸せな部屋だ。トイレに入る前は居心地が悪く、不安でイライラしていても、出てきたらハッピーだからだ"
私はトイレの伝道師ジャック・シム。
世界では「ミスター・トイレ」と呼ばれている。
「トイレはどこですか」──世界で最も問われることが多い質問だ。眠いのを我慢したり、空腹を我慢したりするのとは違い、トイレを我慢するということはとても難しい。
人は毎日、6回から8回トイレに行く。生涯を通じて見ると、私たちはおおよそ人生の3年をトイレで過ごす計算になる。まさに一生の間に最もお世話になる施設がトイレだと言っても過言ではないのだ。
私は40歳でゼロから社会起業家になり、2001年にWTO(World Toilet Organization=世界トイレ機関)を立ち上げた。多くの人にトイレの重要性を理解してもらい、世界中で行われているトイレ健全化活動がお互いにレバレッジし合えるような活動を推進している。
2013年には国連の全会一致で世界トイレの日(11月19日)の制定に漕ぎつけた。