“嫌われる勇気”を生み出した「本の読み方」
2019年11月05日 公開 2024年02月16日 更新
240万部突破の大ベストセラー『嫌われる勇気』などの著作をもち、アドラー心理学の権威である岸見一郎さん。「読書」と「生きること」をテーマに掘り下げた初の読書論を執筆されました。それが『本をどう読むか』(ポプラ社)です。
本書を通じて、岸見さんはどんなメッセージを読者に投げかけているのでしょうか。岸見さんの「生き方を変える本」、そして自分にとって読むべき本を選ぶ「選択眼」を磨く方法についてお聞きしました。(記事提供:本の要約サイト「flier」)
読書には、人を救い幸福にする力がある
── 著書『本をどう読むか』のなかで、岸見さんが一番伝えたかったメッセージは何ですか。
この本の帯に書かれている「読書には、人を救い幸福にする力がある」という言葉に尽きます。読書を通じて、いま生きている世界とは違う世界があることを知ることができるからです。
たとえ現実がどれほど厳しいものであっても、本の世界に浸っているときは安心感を持つことができます。これは決して逃避ではありません。そんな喜びを読書に見出せる人は幸福であると私は考えています。
たとえ日々の対人関係で誰にも理解されないとしても、本の著者は、少なくともあなたの仲間なのです。
もちろん、その著者と直接会っているわけではありませんが、何かしら共鳴するところがあれば、その著者は自分の理解者だととらえることができます。そういう読書をする人が増えるようにと願って、『本をどう読むか』を執筆しました。
外国語を学ぶと「不完全である勇気」をもてるようになる
── 岸見さんはプラトンやアドラーの著作を翻訳されていますが、外国語学習の効用についても本書で書いておられましたね。
読書というのは、何か資格をとるためなどと、目的ありきでなくてもいいわけです。「ただ読んでいる時間が楽しい」という読書があってもいいし、新しいことを知る喜びを味わえます。
その顕著な例が、書物を通じた外国語学習です。私は60歳になって韓国語を学び始めました。非常に聡明な韓国人の先生について勉強しています。
韓国の作家キム・ヨンスの『青春の文章+』というエッセイを読みましたが、いつも本を読みながら先生と議論をするので、読み終えるのに2年以上かかりました。
欧米の言語は若い頃からずっと勉強してきましたが、韓国語を学ぶのは初めてだったので、最初は初歩的なミスばかりしていました。学びはじめの頃は間違えて当然なのに、そんな自分を認めるのはなかなか難しいことがあります。
けれども、外国語を学ぶと、不完全な自分を受け入れられるようになっていく。つまり「不完全である勇気」をもてるようになるのです。
年をとると、人から間違いを指摘される機会も減ってしまう。だからこそ、自ら新しいことを学んでみることが、いっそう大事になると考えています。