「大暴落の原因はコロナでなく、消費増税?」 プロが懸念する”さらなる下落相場”
2020年03月31日 公開 2024年12月16日 更新
野村投信時代に約8000億円の資産運用を担当し、ファンドマネージャーとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つ近藤駿介さん。現在は評論家として活動し2020年2月には『202X 金融資産消滅』が刊行されました。
マクロな視点での経済分析に定評がある近藤さんに、本稿では、作家エージェントで自身も『花戦さ』などのヒット作品の著者でもある鬼塚忠さんが、コロナ騒動で関心が高まっている今後の景気動向についてお話を聞きました。
※本稿は2020年3月時点の情報に基づき、経済環境や投資に対する考え方を示したものであり、投資や個別の金融商品を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任で行うようお願いいたします。
コロナ騒動が年金資金を運用するGPIFに与える影響とは?
(鬼塚)収まる気配のないコロナ騒動ですが、感染の不安だけでなく、経済への影響に関心が高まっています。マクロな視点での経済分析に定評のある近藤さんに、今後の景気動向をお伺いしたいと思います。近藤さん、今回のコロナ騒動が経済に、そしてわたしたちの生活にどのように影響してくるのでしょうか?
(近藤)そうですね。早ければ2月には感染拡大が収まるだろうという楽観論も出ていましたが、もう世界の投資家が「Under control」ではないと認識し始めましたね。株価が証明しています。世界各地で株価が下落しています。
(鬼塚)昨年は「老後2000万円」が話題になり、日本人はおしなべて年金の心配をしがちです。こうして、コロナウィルスの影響で、景気が悪くなってくると、年金がもらえるのかさえ不安になってしまいます。
(近藤)年金は制度としては破綻しないので受け取れることは間違いないと思います。しかし、問題は年金支給額確保のために穴埋めが必要になることです。それがどういうことなのか。私はそちらに関心が高まってほしいと思っています。
(鬼塚)穴埋めとはどういうことでしょう。わかりやすく教えてもらえますか?
(近藤)年金制度は現役世代の保険料と税金で成り立っています。この制度そのものは今後も大きく変わらないでしょう。ただし景気悪化が続くと給料が減りますし、高齢化が進み労働人口も少なくなっていきます。すると給料と保険料は連結していますから年金の財源が少なくなりますよね。
(鬼塚)すると年金支給額が減るということもありえますか?
(近藤)財源が足りないので支給額はおそらく減るでしょう。それだけでなく財源が足りないので何かで穴埋めしなければならなくなります。それが問題です。
(鬼塚)どういうことでしょうか?すこしイメージがわきづらいのですが。
(近藤)GPIFは知っていますか?
(鬼塚)はい。年金を運用している機関ですよね。
(近藤)正式名は「年金積立金管理運用独立行政法人」。約160兆円の豊富な資金量を持つことから「市場のクジラ」「世界最大の投資機関」とも呼ばれています。ケタ外れの資金を動かしているGPIFは市場に大きな影響を持っています。
このGPIFが年金支給額確保のために資産を切り崩すことが、公的年金の健康診断ともいわれる「財政検証」で明らかにされているんですね。資産を切り崩す時期は近い将来と未確定だったのですが、ここに来て、コロナ騒動による景気悪化で税収の見通しが危うくなりました。
さらには株価が暴落したことでGPIFが保有している株の価値も大きく下落しました。これによりGPIFが資産を切り崩す時期は早まったと見ていいでしょう。つまり、想定より早期の切り崩しと GPIFの保有する金融資産の価値の下落のダブルパンチに見舞われる可能性が高まっています。
(鬼塚)つまりGPIFが想定より早期に買手から売手に回るということですか?
(近藤)そうですね。今までGPIFは日本株式市場最大の買手として、日本の株価を支えてきました。そのGPIFが売手に転じると何が起きるでしょうか?ということです。
(鬼塚)約160兆円の資産を持つ機関投資家が売手に回るとすると市場への影響は……。思うような株価では売れないですよね。すると株価が低迷するのでしょうか。
(近藤)しかも1,2年という期間ではなく、長期間にわたってダメージを受けるでしょう。景気悪化と高齢化の進展で、年金財源の確保が難しくなりますから。すると長期株価低迷時代がやってくる可能性が高い。
もともと年金支給の財源確保のために売手に回ることはGPIFのシナリオにありましたが、コロナ騒動による景気悪化で、そのタイミングが早まる可能性が高くなりました。なにしろ「世界最大の投資機関」ですから、世界の投資家がGPIFの動きに注目しています。
(鬼塚)コロナ騒動と経済のことをもう少し詳しく話を聞かせて下さい!