「必要な職種を除き、オフィスでの仕事は、原則自宅で行えるようにしていただきたい」。緊急事態宣言発出の首相会見でテレワークへの移行が呼びかけられた。
早々に体制を整え実行に移す企業がいる一方、捺印のために出社しなければいけない、オンラインのやりとりに上層部がついていけないなど、さまざまな理由で徹底されていない企業も依然として多く存在する。
在宅が可能な仕事内容にもかかわらず、テレワークに踏み切れない組織が後を絶たないのはなぜか。緊急時以外もテレワークを導入すべきと長らく主張し続けてきた、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまね氏は、テレワークへの反対意見のほとんどが実は根拠の薄いものだと語る。
本稿では、沢渡氏の共著作『働き方の問題地図』(沢渡あまね、奥山睦 著 )より、対面での仕事にこだわり、テレワークを避けたがる人の残念な思考について書かれたを一節を紹介する。
※本稿は『働き方の問題地図』(沢渡あまね、奥山睦 著 白井匠イラスト、技術評論社刊)より一部抜粋・編集したものです。
あくまでも対面にこだわる残念な上司
【シーン1 ねぇ、ずっといっしょにいてよ……】
女「ねえ、明日もまた会えるよね?」
男「ごめん。明日はひさしぶりに友達と飯食おうと思うんだ」
女「ええ! なんで? 毎日いっしょにいてくれないのはイヤ」
男「そういってくれるのはうれしいんだけど。でも、必ず電話かLINEするから!」
女「ええぇ~。電話、LINE? そんなんじゃダメ。あたしとちゃんといっしょにいて!」
男「(まいったなぁ……)わかった! じゃあ、友達との約束は断るわ」
女「ほんと? あたし、あなたのこと大大大好き。これからもずっといっしょだよ!」
男「そうだね。大好きだ♪」
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……はい、カット! そこまで!
あなたの職場、こんな感じになっていませんか?
……といっても、オフィスの恋愛事情を詮索したいワケではありません。職場における、上司と部下の関係のおハナシです。このラブラブシーン、職場にたとえるとこうです。
【シーン1 ねぇ、ずっといっしょにいてよ……〈職場編〉】
上司「……じゃあ、続きは明日、また打ち合わせして話そう」
部下「あ。すみません、明日は家族と予定があって、有給入れてるんですけど」
上司「ええ? そりゃ困るな」
部下「なら、電話会議かメールで報告しますので」
上司「そんなんじゃダメだ。仕事ってのは、きちんと顔を突き合わせてなんぼだろう。そもそも仕事というものは……」
部下「(なぜ、そこまでして対面にこだわる……)」
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「やはり仲間同士、顔を合わせていないとね」
わかります。わかるんです! 対面コミュニケーションは大事。面と向かって仕事をするに越したことはない。
でも、これからの時代、出社主義の働き方に依存していたら、業務そのものが脆弱になってしまうおそれがあります。