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「過去の過ちを何度も蒸し返す妻」に苦悩する夫のための“逆転の一手”

黒川伊保子(感性リサーチ代表取締役社長/感性アナリスト)

2020年04月24日 公開 2020年04月24日 更新

 

「共感」は、感情トリガーのアシスト役

女性たちが対話において共感(「わかる、わかる」)を多用するのも、感情トリガーが発動しやすい脳の持ち主だからだ。話し相手が「気持ち」を語ると、同じ気持ちと共にある記憶を瞬時に引き出して、同調してあげることができるのである。

さらに、他者の体験談に共感すると、その体験記憶に感情キーが付帯するので、共感型の対話は、感情キー付き記憶を量産できる。

公園で赤ちゃんを連れた母親たちが立ち話をしているシーンを思い浮かべてほしい。ある母親が「先週、うちの子が熱を出したの。真夜中にぐんぐん上がって40度近くなって……」と言ったら、他の母親たちも冷静ではいられない。「えーっ、それは怖いね」と身震いしながら話を聞く。ここで「なるほど、40度ですね。それから?」と冷静に事情聴取する母親はそうはいない。

なぜならここでは、共感が何より重要なのだ。感情が起これば、今聞いた体験談に感情キーが付帯する。感情キーが付帯した記憶は、のちに感情トリガーによって瞬時に想起できる。

「思い余って119番に電話したら、救急相談センターに電話しろって言われてね、いろいろアドバイスしてもらって、とにかく○○したわけ」なんていう話を、自分の子どもに同様の事態が起こった際に、すばやく思い出せるのである。

しかも、感情キー付き記憶は、時系列の中に埋もれない。何十年経っても、瑞々しく再体験する。孫にもひ孫にも、瞬時に使える。

何十年も前の「夫のひどい一言」を、今ここで起こったかのように言い出す能力を思い返してみればいい。あれと同じことを、家族の命を救うシーンで多用しているのである。

 

「過去の過ち」を何度も蒸し返されている方へ

蒸し返しは、とっさの反射神経で起こるものである。止めろと言われても、止められない。しかも、思い出せば、毎回瑞々しく傷ついている。

つまり、100回思い出せば、100回傷ついているので、100回あやまらなければならないのである。

責められた側にとっては卑怯に思えるかもしれないが、意図的に武器として使っているのではない。妻の蒸し返しは、子育て期間は強く働くが(子育てには感情トリガーが不可欠だからだ)、やがて少し緩慢になる。

しかも、見限った相手には発動しない。蒸し返されたら、彼女の母性と愛の証だと思って、あやまってあげてほしい。

こういうときのために、「仲直りのアイテム」(定番のお菓子とか、定番の家事手伝いとか)を作っておくと便利かも。蒸し返されてあやまってもなお、家庭内の空気が重かったら、近くのコンビニまで行って、彼女の好きなブランドのアイスクリームを買ってくる。

判で押したようにそうしていると、負の記憶(たった一回の過ち)が、正の記憶(変わらぬ誠実)に変わることもある。

もしも、職場で、過去の過ちを何度も蒸し返されているとしたら、それは、よほどそのことが心にひっかかっているのである。やがて、恨みや蔑みに変わる危険な種だと思ったほうがいい。

この場合は、蒸し返されたときでない平常時に、しみじみとあやまることだ。出張やランチのお供をしたときにでも、「きみには、あのとき、酷なことを言ったな」とか「あのとき、僕は○○すべきでしたね。今になって改めて、部長のことばが身にしみます」とか。

もちろん妻や恋人にも、散歩やドライブしながら、「あのとき、あんなことを言ってごめん。悲しかったよね」と。うまくいけば、蒸し返しが消える。

蒸し返されたときにあやまっても、それは"利子”を払っているに過ぎない。"元本”は、「なんでもない、そこそこしあわせな平常時」にあやまることでしか返せない。

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