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“死と隣り合わせ”の⽇本の学校…ニッポンの教育が沈みかけている「5つの理由」

妹尾昌俊(教育研究家)

2020年06月10日 公開

いま、日本の教師は危機的状況にある。年間5000人が精神疾患休職となる「死と隣り合わせの現場」で働き、その過酷な労働環境が「学ばない教師」「信頼されない教師」を生み出している。

しかもその背景には、日本の教育の「構造的な大問題」がある、と全国の学校現場を渡り歩く教育研究家の妹尾昌俊氏は指摘する。

そこで今回は、そんな妹尾氏の著書『教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない』から、日本の教育現場の背景にある危機的状況=「ティーチャーズ・クライシス」について一部抜粋・編集の上、紹介する。

 

知られざる「ティーチャーズ・クライシス」の真実

2006年、⻄東京市。市⽴⼩学校に勤務していた新任の女性教諭Sさん(仮名、25歳)が、採用されてわずか半年後の10月に自殺を図りました。彼女は意識を取り戻さないまま、その2か月後に亡くなりました。

Sさんは新任早々、2年生の学級担任、体育委員にもなり、5月は運動会に向けた準備などで忙しくしていました。そんななかで、小さな「事件」が起きました。クラスのある児童の体操服が隠され、トイレで見つかったり、上履きが隠されたりしたのです。

同じ時期(5月)には男子児童Hが万引きしたという情報がありました。Sさんが保護者に連絡したところ、その親からは大声で怒鳴られ、「事実を示せ」と言われました。副校長や主幹教諭が電話を代わって対応し、最終的には校長が電話をかけて謝罪するという事態にまでなりました。

その後、実際にHがコンビニで万引きする事件が起きました。店の防犯ビデオで確認できたものの、保護者は万引きの事実をなかなか認めず、店側と約4時間半にもわたり揉めたのです。Sさんは終電の時間まで、店と保護者と話し合いました。

Sさんが母親あてに6月21日に送ったメールには「仕事、毎日睡眠削っても全然おいつかんぐらいで……」と綴られていました。彼女は6月頃、同僚に次のように話していたそうです。

学校内のトラブルを校長に相談すると、まず「あなたが悪い」と怒られるし、言えずにいると後になって「何で言わなかったのよ」と怒られるし、どちらにしても怒られる。

「こんな気分になるために教師を目指したんじゃない」

7月、Sさんはうつ病と診断されました。8月末まで病気休暇を取りましたが、9月1日から復帰しました。

そんななか、夏休みの作品を教室に展示する際、ある児童の作品だけ展示をうっかり忘れてしまいました。

この児童の保護者から、Sさんと管理職にクレームが来て対応に苦しんだといいます。さらに、クラスではいじめも起きていました。深夜や休日にも、彼女の携帯電話には保護者から電話がかかっていました。

Sさんが自殺を図ったのは、その後の10月でした。Sさんは、自殺を図る1週間前、母親にメールを送っていました。メールは出勤する前に送られたもので、次のように書かれていました。

毎日夜まで保護者から電話とか入ってきたり連絡帳でほんの些細なことで苦情を受けたり…つらいことだらけだけど…薬飲みながらでも体が動くうちはなんとか行き続けることにした。泣きそうになる毎日だけど。。。。でも私こんな気分になるために一生懸命教師を目指したんやないんに…おかしいね。今日も行ってきます。

このような痛ましい事件にもかかわらず、地方公務員災害補償基金が自殺と公務との関係を認めなかったため、Sさんの両親は裁判に訴えることにしました。

結果、一審に続き、東京高裁でも2017年2月に公務災害と認める判決が出て、確定しました。勝訴でしたが、Sさんの死後10年以上経過してのことでした。

東京高裁は、「相当な精神的負担があった。新任教師の研修では『欠勤するのは給料泥棒』といった内容の発言があり、十分な支援を受けられなかった」とも指摘しています。

この初任者研修では「いつでもクビにできる」という言葉もあったことが、ほかの初任者の証言等からも明らかになっています。

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教師の仕事は「死と隣り合わせ」

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