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社会

医学部卒の息子が「こんな家に生まれたくなかった」と嘆く理由

片田珠美(精神科医)

2019年07月24日 公開 2024年12月16日 更新

<<絶えず報道される子どもへの虐待やネグレクトなどのニュース。実際に傷つけるだけではなく、子どもを精神的に追い込んでしまう親は確実に存在する。

子どもの気持ちよりも世間体や見栄を優先する。罵倒する。子どもの領域を侵害する。しつけと称して暴力をふるう…。子どもたちは追い込まれていく。このようにして育った子どもたちは…?

もっとも、当事者の親は「自分は正しいことをしている」と思い込んで疑わない。さらに言えば、誰もが知らず知らずのうちに子どもを傷つける親になってしまう可能性は否定できない。

精神科医の片田珠美氏の著書『子どもを攻撃せずにはいられない親』では、自身が子どもを傷つける親にならないためにはどうすればいいのかについて、片田氏自身の経験も交えつつ、「子どもを支配しようとする親」の実例を挙げ、その心理を解説している。本稿では、同書よりその一節を公開する。>>

※本稿は片田珠美著『子どもを攻撃せずにはいられない親』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです

 

子どもの気持ちよりも世間体や見栄を優先する親

我が子を自分の所有物とみなしている親は、子どもの気持ちよりも世間体や見栄を優先しがちである。

たとえば、大学病院の医局で秘書として働いている二十九歳の女性は、結婚を許してくれない両親への不満を打ち明けた。

「今の彼とは二年ほど前からつき合っています。私より一つ年上で、一カ月ほど前に結婚しようということになり、両親に話して、彼に会ってもらおうとしました。しかし、彼の職業が気に入らないということで、会おうともしません。

彼は製薬会社のMR(医薬情報担当者)で、大学病院の先生に薬の紹介や宣伝をしたり、教授に薬の治験を頼んだりするために医局によく来ていて、知り合いました。とても明るくて気さくな人で、営業に向いているなと思いました。

何よりも、一緒にいて安心できるし、とても頼りになります。そういう人間的な部分に惹かれたのですが、両親は理解してくれません。

なぜ職業が気に入らないのかといえば、彼が医者ではないからです。私の父は勤務医ですが、祖父は開業医で、診療所は父の兄が継いでいます。母も医者の娘で、薬剤師の資格を持っています。親戚にも医者がたくさんいます。

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ブランド志向が子どもを追い詰めていく

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