1. PHPオンライン
  2. 仕事
  3. 「得意先とのつながり」だけで威張る営業マンを放置してはいけない理由

仕事

「得意先とのつながり」だけで威張る営業マンを放置してはいけない理由

藤本篤志(グランド・デザインズ代表取締役)

2020年07月21日 公開 2022年03月04日 更新

 

「自力案件」と「会社案件」を区別していない

自力案件とは、文字どおり、自力でアタックし、商談し、受注する案件のこと。会社案件とは、すでに会社の取引先となっているお客様のリピート受注(ただし、自分で開拓した取引先のリピート受注は除く)や会社(電話・メール注文など)や上層部への直接の引き合いがきっかけで、その営業担当となり、受注する案件のことです。

会社案件は、おもに、5つあります。

(1)ルートセールス先からの必然的な案件発生、もしくは受注(別名、打ち出の小槌)
→ルート先側の在庫補充や規模拡大などのきっかけにより、営業担当者が営業を仕掛けなくても、自動的に成績になるもの(本人は、そう思っていませんが)

(2)販売代理店主導による案件発生、もしくは受注
→販売代理店先の営業部全体、もしくは一部の営業社員の実力レベルが高く、営業担当者は実質何ら営業サポートをしなくても、御用聞きをするだけで自動的に成績になるもの

(3)他力案件による案件発生、もしくは受注
→会社が受注した案件、上司が受注した案件など、本人以外が受注した案件を、実務担当者として関わることで、営業担当者の成績になるもの

(4)お客様からの飛込案件発生、もしくは受注
→代表的なものがTEL注。その他には、メールやFAXがきっかけで、商談に伺う前から、お客様側で発注することを決めているもの

(5)その他能力外案件発生、もしくは受注
→上記以外の営業担当者が営業を仕掛けることなく、自動的に受注として計上するもの(たとえば、異動により前任者が受注していた案件を計上するなど)

これらの会社案件の売上・利益と自力案件の売上・利益が、同じ土俵で評価されていることから、営業マンの不満は生じます。中でも、打ち出の小槌を担当する営業マンへの不満は、すさまじいものがあります。

なぜなら、自力案件のほうが、同じ1件の受注を獲るのにはるかに苦労するからです。飛び込み、電話アタック、紹介打診などなど、「いつになったら案件をつかみ取れるのかわからない」状態で、アタックし続ける―そんな目の前が見えない自力案件の苦労を、ポンと目の前に現れた案件を処理する会社案件の1件と同じに評価されたら、不満が出て当然です。

その不満をやわらげるために、評価方法を変える発想まで思い至らないまでも、ルート担当の打ち出の小槌でラクして成績を取っているだけの営業マン、特にベテランをどうにかしたいという考えで、営業担当替えを考えようとする営業部はけっこうあります。

しかし、残念ながら、なかなか実行できません。その理由はある意味滑稽なのですが、「打ち出の小槌の営業担当から脅される」からです。

「このお得意様は、私との人間関係で成り立っています。私が担当から外れたら、この大口受注が他社に持っていかれるかもしれません」

こんな具合です。

「まさかっ!」と思っても、「本当に他社に持っていかれたらどうしよう……」と不安がもたげるので、結果的になかなか担当替えができないのです。

 

「新規取引」と「既存取引」を区別していない

新規取引とは、新たに取引口座を設定する顧客(ニューカスタマー)との取引のことです。年数が空いた復活取引は、原則、新規取引として扱います。ただし、空白年数は3年なり、5年なり、会社によって取り決めが必要です。

それ以外が、既存取引扱いとなります。たとえば、すでに取引を開始している取引先からであれば、いままでとは違う商材のオーダーであっても、既存取引としてカウントします。

新規取引の価値は、既存取引とは比べ物にならないほど高いものがあります。2つのポイントで考えてみましょう。

1つめのポイントは、リスクヘッジです。取引クライアント数が増えることは、1社の解約や継続取引ストップなどの影響が分散されることになり、安定売上の基盤が強固なものになります。

2つめのポイントは、業界シェアの拡大です。営業マンはあまり意識しませんが、新規で1社取引先を増やすことは、そのクライアントが新会社ではない限り、同業他社の取引先が1社減ることを意味します(同業他社の取引が一部残ったとしても、少なくとも同業他社の取引案件数は減ります)。

つまり、新規の1社(案件)契約は、他社と2社(案件)分の差を生じさせることになります。業界シェアが、ブランド形成、企業信用に大きく寄与することを考えると、「新規取引を増やす」という攻めの営業は、最大の防御戦略にもなるのです。

このような価値があるにもかかわらず、既存取引と新規取引を区別しなければ、新規契約で努力している営業マンの不満につながるのは当然です。

次のページ
案件の「難易度」を区別していない

関連記事

アクセスランキングRanking