1日のデスクワーク時間を設定する
~営業マン同士のやりとり~
田中社員「なぁ、テレワークでうまく仕事できてる?」
鈴木社員「あぁ、毎日平均4時間以上は、パソコンとにらみ合いしてるよ」
田中社員「メールを見る以外に、パソコン作業って何かある?」
鈴木社員「田中は、妙なところ真面目だなぁ。パソコン作業は、何やってても仕事なんだよ」
田中社員「鈴木は気楽でいいなぁ。電話商談はすぐ終わるし、家でデスクワークは辛いし……」
テレワークの1日の勤務時間を、残業なしの8時間、つまり480分とすると、300分商談しても180分あまります。商談時間の目標だけを決めても、それで1日を乗り切れることにはなりません。次に決めておくべきプロセス目標は、デスクワーク時間です。
私は、営業コンサルティングによって、デスクワークの位置づけがすでにわかっています。デスクワークは、時間調整弁の役割を果たしているということです。
その意味は、デスクワーク時間が1日平均120分の営業マンと240分の営業マンで、仕事の中身は変わらないということです。つまり、同じ分量のデスクワークがあったとして、時間に追われている人はきびきびと120分で処理し、時間に余裕がある人はゆっくりと240分で処理しているだけなのです。
その証拠に、商談時間が120分の営業マンに240分のプロセス目標を与え、実際に240分を実行してもらっても、ほとんどの営業マンは残業時間が増えることなく、デスクワーク時間が240分から120分に減るだけでした。
言い換えれば、午後7時30分に仕事を終える営業マンは、商談時間が120分から240分に増えても、やはり午後7時30分に帰っていきます。午後7時30分に帰るリズムが何より重要だからです。だから、デスクワークは時間調整弁なのです。
このことは、理屈ではなかなかわかっていただけないかもしれませんが、事実を反映するデータは、つねにそのことを示唆します(リアルなことを言えば、飲み会などの用事があれば午後6時30分に会社を出て、やり残したデスクワークは何の予定もない日に片づけ、午後8時30分を過ぎ、平均して午後7時30分になるということです)。
なお、デスクワーク時間が100分を下回ることはあまりありません。つまり、どれだけデスクワークにかける時間を詰めても、100分から120分ぐらいのデスクワーク時間は健全だということです。
テレワークの場合、まだ確かな実証データはありませんが、1つ言えることは、「勤務時間が8時間をショートしないように工夫しなければならない」ということです。
個人的な見解ですが、勤務時間がフリーの人も、人間の性弱性に負けないために、時間目安の設定をお勧めします(※ジョブ型雇用になったとしても、能力向上のために、この考え方は必要です)。
以上のことから、テレワークにおけるデスクワーク時間の目安は、最大でも120分程度が理想です。
「予習」と「復習」をデスクワークの時間に組み込む
テレワークにおけるデスクワーク時間の内訳は、おもに4点です。
・予習
・復習
・社内書類
・メール関連
このうち、とくに大事なのが、予習と復習です。
予習とは、今日以降予定されている商談のシミュレーションをおこなうことで、商談を有利に進める準備をすることです。
「営業はアドリブが命だから、事前にあまり考えず、ぶっつけ本番がいい」と考える営業マンが少なくありませんが、実態は、事前にいろいろなシミュレーション予習をする営業マンのほうが活きたアドリブができます。また、提案書や企画書の作成も予習の1つです。
ただし、注意点が1つあります。提案書や企画書の作成に時間をかけすぎることで240分、あるいは300分の商談時間が確保できないという事態は招かないようにしてください。
そのような営業マンはどの会社でも多数いますが、日々の商談時間が少なくなることにより営業能力が劣化する一因になっています。本当に優秀な営業マンは、商談時間と提案書・企画書の作成時間とのバランスをうまくとっています。
復習とは、今日、もしくは昨日の商談内容を思い出し、
「もっと違う手を打ったらどうだっただろうか?」
「知識を適切に引き出せていただろうか?」
「お客様の発言を正確にキャッチしていただろうか?」
などなど、振り返り、検証することです。マネジャーからで受けたアドバイスを整理、検証する、お客様からいただいた宿題を片づけることなどもこの時間に含まれます。