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伊勢丹「絶体絶命からのV字回復」へ導いた“新宿の秘めた実力”

杉浦泰(社史研究家)

2020年09月02日 公開

 

大きな危機の裏にある「構造の変化」に注意!

関東大震災など、突発的で大きな危機に直面した際、多くの人は、「急いでもと通りに戻そう」と行動します。未曾有の被害に対して、目先のことを優先して生き残りを図る、というのは、合理的な判断といえるでしょう。

「1日でも早くもと通りに戻したい」「もとに戻れば、また同じ日々がやってくる」と考えるのが、人間の思考回路だからです。しかし、未曾有の危機は、しばしば「人々の行動」や「街の構造」を大きく変えてしまうことがあります。

関東大震災の場合は「東京の人口が東から西へ移動する」という大きな変化が起こりました。伊勢丹はその構造の変化に気づかず神田の地にコンクリート造りの新店舗を開業し、経営危機に陥りました。

このように、危機そのものが去ったあとも、人々の大きく変わった行動パターンが戻ってこないことは往々にしてあります。短期的には危機を乗り切ったとしても、長期的な構造変化を無視してしまうと、ジワジワと経営体力を奪われることになってしまうのです。

「街そのもの、社会そのものを揺るがす大きな危機が襲い掛かったときには、目先の復興だけでなく、構造の変化にも気を配らなければならない」ということでしょう。大きな危機によって人々の価値観が大きく変わることもあり、この変化に対応できるかどうかが、明暗を分けるのです。

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