なぜ日本人には「心配性」が多いのか?…遺伝子的な原因から考える“心の整え方”
2020年09月18日 公開
ささいなことでも心配で仕方が無くなる繊細な人。実はそんな人が多いのは日本人の特徴でもあると、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授は指摘している。
前野氏はロボットの「心」の研究から「幸福学」研究へと転身し、科学的に導き出した誰もが自分で幸せになれる心のベースの作り方を自著『7日間で「幸せになる」授業』にて明かしているが、そのなかでも「心配性への対応策」も示してる。本稿では同書より、心の整え方に触れた一節を紹介する。
※本稿は前野隆司著『7日間で「幸せになる」授業』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです。
科学的に実証する「座禅が心を整える」の効果
ハッピーで快活に大声で笑っているような幸せもありますが、私が好きなのは、心が穏やかで整っている状態。感情の起伏が大きすぎず、静かな湖面のように、心がスーッと澄み切っているような状態。
そんな心持ちでいられることが、持続する幸せにつながると思います。少なくとも、心がざわついている状態は幸せとは言えません。
禅の修行の基本は坐禅にあります。修行僧たちは毎日の坐禅を欠かしません。365日、どこにいようと坐禅の修行をしています。修行を通して悟りを開くことが最大の目的ですが、そのためには常に心を整えておくことを目指します。
では、坐禅が心を整えるということを、科学的に実証できるのでしょうか。実は、最近の脳科学研究によって科学的な根拠が明らかにされています。
脳内の環境変化を分析してみると、人間が幸せを感じているときには、左脳前頭葉が発火していることが知られています。なぜ左脳前頭葉なのか、その詳細はまだわかっていませんが、左脳前頭葉が発火しているときに私たちが幸せを感じるということはわかっています。
そして、修行僧が坐禅を組んでいるときの脳の状態を見たところ、やはり左脳前頭葉が発火しているという結果が出ました。また、長年にわたって修行を積んできた高僧と呼ばれる人たちの脳を調べてみると、彼らの左脳前頭葉は坐禅を組んでいるときでなくても発火していたのです。
つまり彼らは、常に心が整っているということのようなのです。
このように、長い年月にわたって受け継がれてきた坐禅という修行法は、実は心を整える上で非常に理にかなった行為であることが脳科学研究によって検証されています。
坐禅はインドから中国、そして日本に伝わった禅宗の伝統ですが、坐禅に限らず東洋に伝わる瞑想には同様な効果があると考えられます。最近ではマインドフルネスという名称でも呼ばれています。
「気のせい」ではなく脳科学的にも認めらられている“心の整え方”
そんなわけで、幸せになりたいと願うのなら、まずは心を整えることです。そしてそれは、自身の心がけ次第でできるものです。必要以上に怒ったりしない。
一つのことに執着しない。「まあ、いいや」と受け流してみる。そんな心がけも、心の穏やかさにつながっていきます。
ちなみに、坐禅・瞑想には長い歴史のなかでいろいろな型がつくられてきましたが、私は、型にこだわらずに自由に行っていいと思っています。わざわざお寺に足を運ばなくても、自分の部屋で簡単にできます。
まずは静かに座って目を閉じます。開けていても、半眼(半分開けた状態)でもかまいません。正座が苦手ならば胡坐でもかまいません。椅子に座っていても、立っていてもかまいません。
歩きながら行う坐禅や、走りながら行うマインドフルネスもあります。まあ、リラックスできればなんでもいいのです。
背筋を伸ばし、腹式呼吸をします。このときに丹田(おへその数センチ下のあたり)を意識しながら、ゆっくりと呼吸をする。これを五分もやれば、心が落ち着いてきます。
それは気のせいではなく、脳科学的にも有効性が認められているのです。こんな簡単なことで心が整うのですから、やらない手はないですよね。ただし、心の整え方には、個人差があります。