社員を苦しめる「絶対に達成できない目標」…KPIを魔の指標としないための方法
2020年10月08日 公開 2024年12月16日 更新
新型コロナウイルスが世界を大きく変え、私たちの生活を変え、職場での働き方も変えた。
この大きな変化は企業における「人材マネジメント」のあり方に多⼤な影響を及ぼしている。社員やメンバーをどうモチベートし、育成し、企業活動を力強く円滑に導くのか…。激変する環境の中で頭を悩ませている⼈は多いだろう。
企業と社員、組織と⼈を取り巻く環境は大きな変化の途上にあり、誰にも正解がわかる状況ではない。まさに企業の経営者も⼈事部も、そこで働く社員もみな、手探りしながら考えている、という状況だ。
⼈材マネジメントの新しい潮流をふまえて解説した『この1冊ですべてわかる 人材マネジメントの基本』より、人事評価において不可欠な「目標」に触れた一節を紹介する。
※本稿は、『この1冊ですべてわかる 人材マネジメントの基本』 (日本実業出版社刊)の内容を抜粋・編集したものです。
評価におけるKPIとKGIのほんとうの役割
一般的な日本企業において、主な評価の軸は「実績」「能力」「取組姿勢」の3つとされています。
このうち、実績については、定量的に計測することが可能であり、評価に客観性をもたらすことから、ほとんどの企業で評価制度に組み込まれています。
ただ、実績を「最終目標(売上目標や新製品の開発件数など)が達成されているかどうか」のみで評価することは、必ずしも組織と人材の持続的な成長にとって適切な方法ではありません。
上記の課題を解決するための一つの方法として、評価方法に「KPI」(Key Performance Indicator)を組み込むことが考えられます。
KPIとは、最終目標である「KGI」(Key Goal Indicator)を達成するための必要プロセスを数値化したものです。元々KPIとKGIは組織の戦略目標を達成するためのツールとして用いられます。
この考え方を応用して、従来人事評価の項目としていたKGIだけでなく、KPIを評価項目に加えることで、「評価のために目標設定をする組織」から「継続的に目標を達成できる組織」へ変化することができます。
数字を形骸化させないための「KPIマネジメントの全体像」
まずはKPIマネジメントの全体像を見ていきましょう。KPIマネジメントの構成要素は「KGI」「KPI」、そして「KSF」(Key Success Factor、重要成功要因)の3つです。
KSFは、最終目標であるKGIを達成するために必要不可欠または重大な影響を与える活動・行動を指します。例えば、KGIが売上目標であった場合、顧客への提案活動や新規顧客への訪問活動などがKSFとして考えられます。
そして、これらの活動の達成度を測定するために数値化された目標値がKPIとなります。
最も重要なポイントはKSFを正しく抽出することです。KSFの抽出が適切に行われなければ、設定されたKPIを達成してもKGIが達成されない、という事態が生じる可能性があります。
自社を取り巻く環境や、市場・他社動向、自社の強み弱みなどをしっかりと分析し、適切なKSFを抽出することが重要です。
また、KPIを設定した後は、その進捗状況を定期的にフォローしていくことや、目標と現状のギャップを分析し、必要に応じて改善策を検討していくなど、次項でも解説するPDCAをしっかりと回していくことも同じく重要です。