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ついに“民が官より”時代遅れに! 霞が関「パスワード付きzipファイル廃止」の衝撃

沢渡あまね(業務改善・オフィスコミュニケーション改善士)

2020年11月20日 公開 2022年02月22日 更新

「もはやイケていない」、「デメリットだらけ」のセキュリティ対策として悪名高い「zipファイル+パスワード別送」。通称「PPAP」とも呼ばれるこの慣習について、平井卓也デジタル改革担当相は11月17日の定例会見で、中央省庁の職員が文書の送信などに使用するパスワード付きzipファイルを廃止する方針を明らかにした。

官公庁が本腰を入れ始めたことで、民間にはどのような影響が出てくるのか。時代遅れの慣習を放置する企業には何が待っているのか。

著書『仕事ごっこ』(技術評論社)の中で以前からこの「PPAP」の問題点を指摘してきた、業務改善・オフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまね氏への緊急取材の模様をお届けする。

 

霞が関の「PPAP廃止」が民間企業に与える影響

――平井卓也デジタル改革担当相が、中央省庁でのパスワード付きzipファイル(PPAP)を廃止する方針を打ち出しました。民間企業にはどのような影響がありそうでしょうか。

【沢渡】素晴らしい流れですし、いろいろな意味で影響は大きいと思います。

まず直接的なところでいえば、官公庁の影響を受ける民間企業への波及効果は大きいでしょうね。官公庁の仕事を請け負っている企業、官公庁に出入りしている人の数はそもそも多いわけです。

時代遅れのやり方でも、それが入札要件にも含まれているために、一次、二次、三次、四次請けと非効率な方法に従わざるを得ない側面があったんですね。そうした企業の方々を助ける意味でも、今回の動きは大きいです。

さらに別の角度でいえば、「官」の立場から、環境は生産性の面でもムダだという声明が出たことも重要ですね。

私自身、拙著『仕事ごっこ』を昨年に出して以来、PPAPがいかに時代遅れなやり方なのか、セキュリティの専門家の後ろ盾も得ながらさまざまな場所で訴えてきたんです。

しかし中には、なかなか理解を得られない時もありまして。単なるわがままだとか、対応が面倒くさいとかいう声もありましたし、「モバイルでもメールが見れないことは全く問題と思わない」「仕事はパソコン前提で考えるのが常識だ」とまで言われることもありました。

そういう人たちに「霞が関もこう言っていますよ」と返せるようになったのは大きい変化ですよね。

――「PPAPは時代遅れの慣習」というお墨付きを官公庁が与えたわけですからね。

まさにそうなんです。

 

日本の働き方に残る、2つの「固定」

――PPAPの問題点について、あらためてお聞きしたいです。

【沢渡】後ほど説明しますが、セキュリティ対策としての効果はきわめて限定的です。その前にまずお話したいのが、そもそも今の社会の変化にそぐわない、むしろ阻害する要因になっているということです。

今までの日本の働き方って、大きな2つの「固定」があって、1つ目が「場所固定」の前提です。製造業的な考え方と同じで、工場って全員が集まって生産ラインで仕事をする前提で、設備やマネジメントの仕組みが設計されていて、それが合理的な時代があったわけです。

オフィスワーカーの仕事も、基本毎日同じ持ち場に集まって、自分専用のデスクトップPCあるいはノートPCがあって、その場所で使う前提で設計されていました。

ところが今まさにコロナ禍という社会的なリスクが発生し、テレワーク推進、パラレルキャリアも増えてきている時代においては、その前提自体が通用しなくなってきていますね。PPAPは、今まさに広がっている「場所にとらわれない働き方」の阻害要因なんです。

平井大臣の会見でも、PPAPによって、スマホなどのモバイル機器でメールやドキュメントが見れないことが大きく問題視されていました。この点は重要です。

場所を問わず、その場ですぐにメッセージを見てレスもできる環境を阻害するやり方は、きわめて非効率であり、ビジネスのスピード感も損なわれてしまいます。しかも、忙しい人であればあるほど、同じ場所でパソコンにかじりついて仕事をするとは限らない。ここも大事なポイントですね。

もうひとつの「固定」に話を移すと、今は「顔」が固定化しなくなった時代です。「顔」って何を指しているかというと、ずばりキャリアのことですね。たとえば私自身、フリーランスの顔、企業の取締役の顔、企業の顧問の顔があったりするわけです。

そうやって同じ人が複数の組織に所属して働く時代になると、いつも同じ勤務先にいるとは限りません。パソコンなどのIT環境も、固定的なものを使っているとは限らないです。

だからこそ、デバイスを選ばないような環境で、仕事をしやすい、レスもしやすい環境を作っていかないと、にっちもさっちもいかなくなると思うんです。

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ワークスタイルの変化や多様性を阻害

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