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“従来の人事制度”を揺るがす研究者の結論…「人は他人を正しくを評価できない」

大賀康史(フライヤーCEO)

2020年12月30日 公開 2022年10月25日 更新

オールラウンダーが高く評価される制度の問題点

サッカーの世界で、リオネル・メッシが超一流のプレイヤーであることに疑いがある人はいないでしょう。しかしながら、能力のバランスが求められる企業の人事評価に従ってメッシを評価すると、低い評価になる可能性があります。

例えば、メッシは体格にめぐまれていません。そして、ほとんどのボールタッチを利き足である左足で行い、ボールタッチに左右の足を使う比率はおよそ9対1にもなっています。一般的には両足を巧みに使える方が望ましいと言われるので、この点もマイナス評価になるでしょう。

現代の評価には、コンピテンシーモデルと呼ばれる評価項目が使われることが多くなっています。

例えば、リーダーシップ領域が22項目、マネジメント領域が18項目、ビジネス領域で45項目、対人関係領域で33項目、合わせて118項目といった具合です。ただ、その項目による評価と成果が直結するわけではありません。

メッシはその突出したパフォーマンスを能力のバランスではなく独自の強みの発揮で実現しています。成果を出すということと関連が強いのは、短所の存在よりも長所の発揮です。

著者の研究によれば、最高の人材はオールラウンダーではなく、独自の愛すべき尖りを活用することを通じて最大の貢献をする人を指すのだそうです。

そのため人事制度においても、能力のバランスを評価することは悪手になります。成果を主として評価を行い、そのためにどのような能力を発揮したのかに関しては、画一的な評価をしない方が良さそうです。

 

人は「他人」を正しく評価できない

次の問題提起は、人事評価の根本を揺るがすものと言えそうです。それは、「人は『他人』を評価できる」という通説が嘘であるということです。

1から5の5段階評価を付けることに対して、3から5しか付けない評価者は多いものです。評価者の視点では、1や2を付けることは一般的にストレスがかかります。

誰でも自分の部署やそのメンバーは高く評価されたいと願うからです。さらに、評価者によって、4と5しか付けない人もいれば、まじめに2から5の辺りでバランスを取って評価を付ける人もいます。

そのバラつきは、被評価者が優秀かどうかよりもずっと、評価者の性格の特性が表れているのだと言います。どれだけ評価者に評価方法を事前にガイダンスをしても、基準を統一することは難しいのです。

対象が知識労働者であればなおさらです。評価が3.8と3.9の知識労働者の違いを明確に説明できる評価者はほとんどいないでしょう。

では、私たちはどのように評価というものを扱うべきでしょうか。本の記載からは離れますが、まず、正確な評価をするということをある程度あきらめなければいけないことを理解する必要があります。

そして、会社として「どういう行動をすれば高い評価が得られるのか」ということを明示することに意味があると認識するべきです。つまり、評価は正しさを探求する裁判ではなく、組織を束ねる人からのメッセージなのだととらえるのです。

つまり、評価に関してはある程度の正確性は犠牲にしつつも、経営を円滑に動かすための優れたコミュニケーションツールと位置付けるということです。もちろん評価に対する不満はなくなりませんが、ある程度それは発生するものと腹をくくっておくと、問題へも落ち着いて対処できるでしょう。

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著者紹介

フライヤー(flier)

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