彼らは本当に中国人!? 他人を信用することに不安のない中国の「Z世代」
2021年01月20日 公開 2022年10月24日 更新
他人を信用することに不安がない
もう一つ驚かされたのは、アプリで知り合った見ず知らずの人を簡単に信用してしまうことだ。
前述の北京の女子大生は日常的にフリマアプリの「閑魚(シエンユー)」を介して、さまざまな人と知り合うといっていた。
商品の売買について、メッセージのやりとりをするが「別に問題ないです。同じようなグッズを集めている人だし、初めてでも、軽いノリで会話ができます。信頼できる相手かどうか? とくに考えたことなんてありません。
同じような趣味の人が多いので、むしろ気が合うことのほうが多いです。そのあとSNSで友だちになることはあまりありませんが、だからといって不信感などもまったくないです」(女子大生)といっていた。
釣りが趣味で、釣り道具などをこのアプリでよく購入するといっていた上海市内の男性にも聞いてみたのだが、同様のことをいっていた。
「このアプリはもともとショッピングサイトの淘宝(タオパオ)内にあったものだし、現在はアリババ傘下ですから、多くの人が利用しています。
たまにちょっと怪しい商品が流れてくることもあるのですが、このアプリで売買するときには自分や相手の信用スコアも表示されますし、過去にその人がどんな商品を売買したかという履歴も見られるようになっています。ですから、不安やリスクは感じていません」
信用スコアとは、「芝麻信用(ジーマーシーヨン)」と呼ばれるアプリで、個人の信用が「見える化」できるシステムのこと。
過去の支払い履歴やSNSでの言動などによってスコアが加算されていき、スコアが高ければ高いほど個人の信用度が高まるというものだ。
この話から、私はアリペイ(支付宝[ジーフーパオ]))が普及し始めたころのことを思い出した。アリペイもアリババ傘下のアント・フィナンシャルが開発した電子決済サービスだ。
2004年に淘宝(タオパオ)の決済機能として始まり、2016年ごろにはスマホの決済手段として欠かせない存在となった。
「相互不信社会」の変化
アリペイが中国人に受け入れられ、爆発的に普及した背景の一つには、中国人同士の不信感があったといわれる。
それまでの中国は「相互不信社会」であり、顔も見たことのない赤の他人のことは一切信用できなかった。だから、日本のように、発送した商品の箱に振り込み用紙を入れるなどの後払いシステムは、中国人には到底受け入れられない。
「信用社会」だからこそできる日本的なやり方だった。クレジットカードも、与信管理が難しい中国では根づかず、カード払いという方法も主流にはならなかった。
アリペイの仕組みは米国発の決済システム、ペイパルと同様で、販売者と購入者の間に立ち、双方のリスクを回避することだ。商品を無事に受け取り、問題がなければ、アリペイを介して支払いを完了する。販売者の実態がよくわからなくても、自分がリスクを取ることはない。
もし問題があれば、ペイパルと同じく、アリペイに対して異議を申し立てることができる。だからこそ「相互不信社会」だった中国で受け入れられ、定着した。
「閑魚(シエンユー)」アプリも支払いに関しては決済サービスを利用する。商品のことでトラブルが起こる可能性もあると思うが、アリペイが浸透し、中国社会が変化してきたからか、Z世代の若者たちからは不思議なほど、知らない人に対する不信感や不安の声は聞こえてこなかった。